交通事故で頭を打った際に行うべき対応と注意すべき症状とは?
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郡山市の令和6年の交通事故発生状況によると、1年間で600件の事故が発生し、713人が負傷しています。
交通事故によるケガのなかでも、頭部の損傷は命を落とすリスクもあるため、特に注意が必要です。
本記事では、交通事故で頭を打った際に取るべき対応と、見逃してはいけない危険な症状について、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が詳しく解説します。


1、交通事故直後に必ずとるべき行動
交通事故に遭ったら、すぐに病院で検査を受けること、そして警察に「人身事故」として届け出ることが重要です。事故直後は、気が動転してしまうこともあるでしょう。しかし、早めに適切な対応をとることで、ケガの早期発見や、適正な補償を受けるための証拠を確保できる可能性があります。
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(1)すぐに病院で検査を受けることが重要
交通事故で頭を打った場合、事故直後は異常がなくても、数時間から数週間後に頭痛やめまい、吐き気、意識障害などが現れることがあります。そのため、「痛みがないから大丈夫」などと自己判断せず、必ず病院で診察を受けるようにしましょう。
頭部に衝撃を受けたなら、脳神経外科でCTやMRIを撮影しておくことも重要です。その際、事故後なるべく早く受診しないと、「交通事故が原因ではない」と判断されてしまう可能性もあります。事故が原因のケガと認められない場合、適切な治療が受けられない、損害賠償の請求が難しくなるといったリスクが生じるでしょう。
交通事故による損害賠償請求をするには、事故によって負ったケガであることを証明する、医師の診断書が必要です。診察が遅れるほど、事故との因果関係が証明しづらくなり、適正な補償を受けられないおそれもあるため、事故の当日中に必ず病院を受診しましょう。 -
(2)警察に「人身事故」として届け出る
事故でケガをした場合は、警察へ必ず連絡し、「人身事故」として届け出ることが大切です。警察に届け出をしないと、「事故証明書」が発行されず、保険会社への請求や損害賠償請求ができなくなるおそれがあります。
事故直後に痛みを感じず、「物損事故」として届け出たものの、後日痛みや症状が出ることもあるでしょう。その場合は、できるだけ早く警察に連絡して、人身事故に切り替えてもらうことをおすすめします。ただし、その際には、事故直後に届け出なかった理由を警察から質問されることがあるので、状況を説明できるようにしておきましょう。
2、頭を打った際に現れうる注意すべき症状
交通事故で頭を打った場合、すぐに症状が出なくても安心はできません。特に、脳にダメージを受けると、深刻な後遺障害が残る可能性もあります。
そのため、事故後の体調の変化には十分に注意し、異変を感じたら早めに病院で検査を受けることが大切です。ここからは、頭を打った際に現れる可能性がある症状について解説します。
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(1)事故直後に現れやすい症状
事故の衝撃による脳の損傷は、比較的早い段階でさまざまな症状を引き起こすことがあります。わずかな違和感でも軽視せず、自己判断を避け、速やかに医療機関を受診しましょう。
① 頭痛・めまい・吐き気
頭を強く打った際、軽い脳震盪(のうしんとう)が起きることがあります。症状としては、頭痛・めまい・吐き気などが現れる可能性があるでしょう。これらの症状は一時的に収まることもありますが、時間が経ってから悪化するケースもあるため、注意が必要です。
② 意識障害・記憶の混乱
意識を失うことや、事故直後の記憶が曖昧になることもあります。この場合、脳にダメージを受けた可能性があるため、早急に病院で検査を受けるべきです。
③ 手足のしびれ・感覚の異常
脳が損傷すると、手足にしびれや感覚の異常が出ることがあります。軽い違和感でも、時間が経つにつれて悪化する可能性があるため、早めに受診しましょう。
④ 目の異常(ぼやける・見えにくい)
視界がぼやける、光がまぶしく感じる、片目だけ見えにくくなるなどの症状が出た場合は、脳や神経に影響が出ている可能性があります。 -
(2)時間が経過してから現れる可能性のある症状
交通事故による頭部のダメージは、直後だけでなく、数日から数週間後に症状が現れることもあります。放置すると深刻な後遺障害につながる可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。
① 慢性的な頭痛・めまい(脳震盪後症候群)
事故後しばらく経ってから、慢性的な頭痛やめまいが続くことがあります。これは「脳震盪後症候群」と呼ばれ、集中力の低下やイライラ、抑うつ状態につながることもあります。
② 記憶障害・注意力の低下(高次脳機能障害)
事故後にもの忘れがひどくなる、話の内容を理解しづらくなる、注意力が低下するなどの症状が出ることがあります。これは「高次脳機能障害」の可能性があり、適切な治療やリハビリが必要になるケースもあるでしょう。
③ 手足のまひ・運動障害(脳損傷の影響)
脳がダメージを受けると、手足が動かしにくくなったり、力が入りにくくなったりすることがあります。事故後すぐに症状が出ないこともありますが、時間の経過とともに悪化する場合があるため、違和感を抱いたらすぐに病院で相談しましょう。
④ 言語障害・人格の変化 事故後に言葉が出にくくなる、話し方が変わる、感情の起伏が激しくなるといった症状が現れることがあります。これは、脳の言語や感情をつかさどる部分がダメージを受けた可能性があるため、専門医の診察を受けるようにしましょう。
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3、後遺障害認定されうる頭部外傷の種類
交通事故で頭を強く打つと、さまざまな頭部外傷が発生する可能性があります。そのなかには、後遺障害として認定される深刻なケースもあります。後遺障害が認められると、その重さによって1~14級の等級が認定されます。
ここでは、交通事故で起こりうる頭部外傷の種類と、それに伴う後遺障害、該当する可能性がある後遺障害等級について解説します。
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(1)むち打ち症(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)
交通事故の衝撃で首が大きく揺さぶられると、むち打ち症(外傷性頚部症候群)を引き起こすことがあります。この症状は、首の筋肉や靱帯(じんたい)が損傷することで起こります。
主な症状は、以下のとおりです。- 首の痛みや違和感
- 肩こり・頭痛
- めまい・吐き気
- 手や腕のしびれ
重度の神経症状が残る場合には、後遺障害等級12級13号、軽度の神経症状が続く場合には14級9号が認定される可能性があります。
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(2)脳震盪(のうしんとう)
交通事故の衝撃で脳が揺れ動くと、脳震盪が起こることがあります。軽度の場合は一時的な意識障害で済むこともありますが、後遺障害が残ることもあります。
主な症状は、以下のとおりです。- 意識を失う(数秒から数分)
- 記憶が曖昧になる(事故前後の記憶喪失)
- 頭痛・めまい・倦怠(けんたい)感
- 集中力の低下・不安感
仕事に影響が出るほどの精神障害が残る場合には、後遺障害等級9級10号、頑固な神経症状が残る場合には12級13号、軽度の神経症状が続く場合には14級9号が認定される可能性があります。
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(3)頭蓋骨骨折
頭蓋骨は脳を守る重要な骨ですが、強い衝撃を受けると骨折することがあります。骨折の種類によっては、脳に深刻なダメージを与えることもあるでしょう。
骨折の種類は、以下のとおりです。- 線状骨折(頭蓋骨にヒビが入る)
- 陥没骨折(骨の一部がへこむ)
- 粉砕骨折(骨が複数の破片に分かれる)
後遺障害等級は、脳の損傷がある場合には1級から9級、骨折が治癒したものの痛みが残る場合には、12級・14級が認定される可能性があります。
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(4)急性硬膜下血腫・慢性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は、事故の強い衝撃で脳を覆う膜(硬膜)の下に血がたまり、脳が圧迫される状態です。慢性硬膜下血腫は、受傷後2週間から3か月ほどたってから症状が出ることがあるため注意が必要です。
主な症状は、以下のとおりです。- 受傷直後の強い頭痛・嘔吐(おうと)
- 意識障害(意識がもうろうとする)
- 事故から時間がたって発症する頭痛や手足のまひ
- 記憶障害・認知症のような症状
後遺障害等級は、症状の重さにより、1級から14級のいずれも認定される可能性があります。
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(5)びまん性脳損傷
びまん性脳損傷は、強い衝撃で脳がねじれることで発生します。脳の広範囲にダメージが及び、意識障害や高次脳機能障害が残ることもあるでしょう。
主な症状は、以下のとおりです。- 意識障害(昏睡(こんすい)状態が続くことも)
- 運動障害(手足の動きが鈍くなる)
- 記憶障害・判断力の低下
- 言葉が出にくい、感情のコントロールが難しくなる
後遺障害等級は、意識障害や運動障害がある場合に1級から7級、記憶障害・注意力低下などがある場合には9級から14級が認められる可能性があります。
4、交通事故被害者が弁護士に相談するメリット
交通事故で頭を打った場合、症状がすぐに出なくても、時間が経つにつれて悪化することがあります。特に、頭部外傷は後遺障害が残る可能性が高く、適切な補償を受けるための対応が重要です。しかし、被害者自身が保険会社との交渉や賠償請求を進めるのは、負担が大きく、適正な補償を受けられないこともあるでしょう。
そんなときに役立つのが、弁護士のサポートです。ここでは、交通事故の被害者が弁護士に相談することで得られるメリットを紹介します。
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(1)精神的・身体的負担の軽減
事故の被害者は、ケガの治療や通院に加え、仕事や家事もこなさなければならないことが多く、心身ともに大きな負担を抱えることになるでしょう。さらに、保険会社との交渉や書類の準備なども行う必要があり、事故後の対応に疲れてしまうかもしれません。
弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りをすべて任せることができるため、精神的な負担を大幅に軽減できます。また、法的に適切なアドバイスを受けながら手続きを進められるので、安心して治療に専念できます。 -
(2)賠償金の増額が期待できる
保険会社は、被害者に賠償金を支払う立場です。しかし、自社の利益を優先するため、本来受け取れる額より低い金額を提示することもあるかもしれません。
弁護士であれば、過去の裁判例や適正な基準に基づいた賠償額をもとに、保険会社と交渉ができます。特に、頭部外傷による後遺障害が残った場合は、適切な慰謝料や治療費の請求が欠かせません。弁護士が介入することで、適正な補償を受けられる可能性が高まります。 -
(3)過失割合の適正な主張ができる
交通事故では、事故の状況に応じて「過失割合」が決まります。保険会社が提示する過失割合が、被害者に不利な内容になっていることも少なくありません。
弁護士は、事故の状況や証拠をもとに適切な過失割合を主張し、依頼者が不当に責任を押し付けられることを防ぎます。特に事故の衝撃で頭を打った場合、被害の程度を正しく評価してもらうことが大切なため、法的観点から交渉が行える弁護士のサポートは欠かせません。 -
(4)適切な後遺障害等級の認定をサポート
事故によって後遺障害が残った場合、「後遺障害等級」の認定を受けることで、適正な補償を受けることができます。しかし、申請手続きは複雑で、書類の準備や医師の診断内容によって認定結果が変わるため、被害者だけで対応するのは困難でしょう。
弁護士であれば、適正な後遺障害等級を獲得するための手続きをサポートできます。特に、頭部外傷による後遺障害(記憶障害・注意力の低下・まひなど)は見逃されやすいため、適切な診断を受け、正しい等級認定を得るために弁護士の力を借りるのが有効です。
5、まとめ
交通事故で頭を打った場合、事故直後に症状がなくても安心はできません。脳へのダメージは後日現れることもあり、放置すると深刻な後遺障害につながる可能性があります。頭痛やめまい、意識障害、記憶障害などの症状が見られた場合は、速やかに医療機関で適切な検査を受けましょう。
また、事故後の適正な補償を受けるためには、医師の診断書や事故証明書などの証拠をしっかりと確保することが必要です。しかし、保険会社との交渉や後遺障害等級の認定手続きは複雑で、被害者自身が対応するのは大きな負担となります。
弁護士に依頼すれば、適正な補償を受けるためのサポートを受けることができます。賠償金の増額交渉、過失割合の調整、後遺障害等級の申請サポートなど、被害者の権利を守るために必要な手続きを代行します。事故後の対応に不安がある方は、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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