交通事故被害にあったとき、整形外科と整骨院を併用することは可能?
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郡山市役所が公表する「交通事故発生状況」によると、令和4年に郡山市内で発生した交通事故の件数は561件で、前年よりも59件減少しています。交通事故の発生件数は減少傾向にあるとはいえ、毎年多くの事故が発生しているため、注意が必要です。
交通事故でむちうちなどの怪我をした場合には、一般的には整形外科に通院をすることになります。しかし、被害者の中には、整形外科への通院と並行して整骨院にも通いたいと考える方もいるでしょう。
そもそも、整形外科と整骨院を併用することはできるのでしょうか。また、整形外科と整骨院を併用する場合には、どのような点に気を付ける必要があるのでしょうか。交通事故の被害に遭ったときに整形外科と整骨院を併用できるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。
1、整形外科と整骨院の違い
まずは、整形外科と整骨院はどのような違いがあるのかについて、説明します。
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(1)整形外科とは
整形外科とは、運動器(骨や筋肉、関節など)の疾患を扱う診療科のひとつです。
主に交通事故やスポーツ障害などで生じた打撲、捻挫、骨折などの外傷の治療や、加齢に伴う疾患などの治療を行っています。
交通事故で整形外科を受診した場合には、レントゲン、MRI、CTなどによる画像検査や、医師による診断を踏まえて、投薬、手術、リハビリなどの処置が行われます。また、会社、警察、保険会社などに提出する診断書については、整形外科の医師が作成します。 -
(2)整骨院とは
整骨院とは、柔道整復師という国家資格を取得した人が施術を行う場所です。
接骨院・ほねつぎなどの名称で施術を行っているところもありますが、名称が違うだけで、柔道整復師による施術場所という点では共通しています。
整骨院では、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷などのように、外傷性が明らかな運動器系の怪我に対する施術を行っています。施術の対象は、整形外科と共通する部分が多いため、交通事故の被害に遭った場合には、整形外科と整骨院を併用することもあります。 -
(3)整形外科と整骨院の違い
整形外科と整骨院の主な違いは、整形外科が医師による治療を受ける場所であるのに対して、整骨院は柔道整復師による施術を受ける場所という点です。
すなわち、整骨院の柔道整復師は医師ではありませんので、「医療行為をすることができない」という点が両者の違いとなります。
そのため、整骨院では、レントゲン、MRI、CTなどによる画像検査、診断書の作成、手術や投薬などを行うことはできません。
2、整形外科と整骨院の併用可否とメリット
交通事故で怪我をした場合には、整形外科での治療と整骨院での施術を併用することが可能です。整形外科と整骨院を併用することには、いくつかのメリットがあります。
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(1)慰謝料が増額できる可能性がある
慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われるお金です。交通事故で怪我をした被害者の方は、痛みや入通院などの負担が生じるため、それに対して、傷害慰謝料(入通院慰謝料)が支払われます。
傷害慰謝料は、入通院期間や入通院実日数に応じてその金額を算出します。
入通院期間や入通院実日数には、整形外科での治療日数だけではなく、整骨院での施術日数も含まれることに留意してください。
整形外科と整骨院を併用することによって、傷害慰謝料が増額できる可能性があります。 -
(2)より高い治療効果が得られる
整形外科は、痛み止めや湿布などの投薬、リハビリなどが治療の中心です。他方、整骨院では、電気、鍼灸、手技などによる施術を行ってくれます。
整形外科と整骨院では、異なる側面から治療および施術が行われますので、両者を併用することによって、より高い治療(施術)効果が期待できるでしょう。 -
(3)夜間や休日でも施術を受けることができる
整形外科の受付時間は、平日の夕方までのところが多く、休日や夜間の治療には対応していないことがあります。そのため、仕事が多忙で治療のために休むことができないという方は、整形外科に頻繁に通うことが難しいケースも少なくありません。
しかし、整骨院では、夜間や休日の施術を行っているところも多いため、仕事を休むことなく仕事終わりに施術を受けることができます。
整形外科と整骨院を併用すれば、被害者の都合に合わせて治療や施術が可能です。
3、整骨院を利用するときの注意点
交通事故の被害に遭ったときに整骨院を利用する場合には、注意しなければならないこともあります。
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(1)整骨院だけではなく必ず整形外科も受診する
交通事故の怪我に整骨院が利用できるからといって、整骨院だけの利用はNGです。交通事故に遭った場合には、まずは、整形外科を受診するようにしましょう。
なぜなら、整骨院では、レントゲン、MRI、CTなどによる画像検査を受けることができず、異常所見があったとしてもそれを発見することができません。交通事故から時間が経ってから骨折などが明らかになったとしても、事故との因果関係が否定されてしまいます。
また、交通事故で後遺障害が生じた場合には、後遺障害等級認定を受けることになりますが、その際には、医師の診断書や画像検査の資料などを提出することが必要です。
整骨院だけの治療では、それらの資料を提出することができず、適切な後遺障害等級認定を受けることができなくなってしまいます。 -
(2)整形外科へも定期的に通院する
整形外科と整骨院を併用している方の中には、受付時間などの面で整骨院の方が便利であるという理由から、整骨院を中心に通う方も少なくありません。
しかし、怪我の「治療」は、整形外科でしか行うことはできません。そのため、整形外科にも定期的に通院することが大切です。整骨院にばかり通っていると、保険会社からは、怪我が完治したものとみなされて、治療費を打ち切られてしまうおそれがあります。
適切な後遺障害等級認定を受けるためにも、整形外科には定期的に通院をするようにしてください。 -
(3)施術費が否定されるリスクがある
交通事故の実務では、整骨院での施術は、医学上一般に承認されている治療方法とは認められていません。
そのため、整骨院での施術によって生じた施術費は、交通事故と因果関係のある損害として認められず、保険会社から施術費の支払いが否定されてしまうリスクがあります。
そのようなリスクを減らすためにも、整骨院に通う場合には、医師の指示を受けて行うようにしましょう。医師の指示とは、医師が積極的に整骨院での施術を指示する場合だけでなく、患者の整骨院での施術希望に対して特段反対しなかった場合も含まれます。
後日施術費の支払いをめぐって争いが生じないようにするためにも、整骨院での施術を希望した旨をカルテなどに記載しておいてもらうとよいでしょう。
4、交通事故での悩みは弁護士へ
交通事故の関するお悩みは、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)整形外科と整骨院の併用によるトラブルを回避できる
整形外科と整骨院を併用する際には、医師の指示を受けて整骨院を利用する、定期的に整形外科に通院するなど、いくつか注意点があります。
自分の判断だけで整形外科と整骨院の併用をしてしまうと、後日施術費の支払いを否定されてしまったり、適切な後遺障害等級認定を受けることができなかったりするなどのトラブルが生じるおそれがあります。
このようなトラブルを回避するためには、交通事故の被害に遭った後、早い段階で弁護士に相談してアドバイスを受けるとよいでしょう。 -
(2)保険会社との対応を任せることができる
交通事故の加害者が任意保険に加入している場合、示談交渉は、加害者が加入する保険会社の担当者との間で行っていきます。
保険会社の担当者は、親身になって対応してくれるように感じるかもしれません。しかし、保険会社は事故による賠償金を支払う立場にありますので、被害者がより多くの賠償金を獲得できるように動いてくれることはありません。
また、保険会社の担当者は、業務として多くの交通事故事案を扱っているため、被害者との間には知識や交渉力において圧倒的に優位な立場にあります。そのため、被害者自身が示談交渉をしても、適切な条件で示談を成立させるのは困難といえるでしょう。
被害者自身の負担を減らして、適切な条件で示談を成立させるためにも、交通事故の示談交渉は弁護士に任せることをおすすめします。弁護士は、被害者に代わって保険会社の担当者と示談交渉を行うことができますので、被害者の利益が最大になるよう示談交渉を進めることが可能です。 -
(3)慰謝料を増額できる可能性がある
弁護士に依頼することによって、慰謝料を増額できる可能性があります。
慰謝料には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)という3つの算定基準が存在します。この3つの基準の中では裁判所基準がもっとも高い金額になりますが、裁判所基準を利用できるのは、弁護士が示談交渉をする場合に限られる点にご注意ください。
保険会社から提示される慰謝料額は、自賠責保険基準または任意保険基準で算定された金額であり、裁判所基準に比べると低い金額であることがほとんどです。少しでも有利な条件で示談をしたいという方は、弁護士への依頼を検討するようにしましょう。
5、まとめ
交通事故の怪我は、整形外科での治療だけでなく、整骨院の施術も併用することが可能です。
ただし、整形外科と整骨院を併用する場合には、いくつか注意点があります。また、後日保険会社との間でトラブルになることを回避するためにも、まずは、弁護士に相談するとよいでしょう。
交通事故の被害に遭ってお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスまでお気軽にご相談ください。
最後まで親身にお話を伺いながら、最適な結果となるように尽力いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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