トクリュウとは? 特徴や身を守る方法、刑事手続きの流れを紹介

2025年04月16日
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トクリュウとは? 特徴や身を守る方法、刑事手続きの流れを紹介

最近では「トクリュウ」という形態の犯罪グループによる事件を耳にします。

福島県郡山市でも、違法薬物譲渡や所持の疑いで令和6年12月にトクリュウのメンバーが逮捕されるという事件が報道されており、全国いたるところで犯行が発生しているようです。

SNSや求人サイトでは、一般人に対して、トクリュウによる勧誘が巧妙に行われています。トクリュウの特徴や手口を理解した上で、不本意な形で犯罪に巻き込まれないようにしましょう。

本記事ではトクリュウについて、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。


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1、「トクリュウ」とは?

「トクリュウ」とは、「匿名・流動型犯罪グループ」の略称です。伝統的な犯罪組織である暴力団などに対して、トクリュウはSNSの発展などに伴って出現した、新しい形態の犯罪グループといえます。

  1. (1)トクリュウの特徴

    トクリュウの特徴としては、以下の各点が挙げられます。

    1. ① 犯罪によって得た収益を吸い上げる中核部分(首謀者や幹部など)が匿名化されていること
    2. ② SNSや求人サイトなどを通じて緩やかに結びついたメンバー同士が、それぞれ細分化された役割を担っていること
    3. ③ 末端の実行犯を使い捨てにして、メンバーを入れ替えながら多様な犯罪活動を行うこと


    このように、匿名性および流動性を持つ犯罪グループであるトクリュウは、組織の把握やメンバーの特定が容易ではないのが大きな特徴です。

    なお、トクリュウが得た犯罪収益の一部が暴力団に流れているケース、暴力団構成員がトクリュウの首謀者やメンバーであるケース、トクリュウが暴力団構成員と共謀して犯罪を行っているケースなども確認されています。

    参考:「令和6年警察白書 第1部 特集・トピックス 匿名・流動型犯罪グループに対する警察の取組 p2」(警察庁)

  2. (2)トクリュウが関与する犯罪行為のパターン

    トクリュウがよく行っている犯罪行為としては、以下のようなパターンが挙げられます。

    • 特殊詐欺:電話など非対面の手段で被害者を信頼させ、口座への振り込みを指示するなどして現金などをだまし取ります。振り込め詐欺や架空請求詐欺などが代表例です。

    • 投資詐欺:架空または確実に損をする投資を、あたかも儲けが期待できるような文句を用いて勧誘し、被害者からお金をだまし取ります。

    • ロマンス詐欺:被害者の恋愛感情を利用してお金をだまし取ります。

    • 強盗・窃盗:首謀者や幹部の指示により、SNSなどで募集した末端の実行犯が強盗や窃盗を行います。

    • 違法店舗の運営:違法に性風俗店・ホストクラブ・賭博場などを運営し、キャストや顧客を集めて多額の収益を得ようとします。


    トクリュウによる犯罪は多種多様で、日々進化していると考えられます。ここに挙げたパターン以外にも新たな犯罪の手口が生まれている可能性も十分にあり得るので、注意が必要です。

  3. (3)トクリュウに巻き込まれるきっかけ

    令和6年警察白書によると、特殊詐欺の受け子等になった被疑者からその経緯を聴取したところ、SNSから応募した人が41.8%でもっとも多く、次いで知人等から紹介された人が32.2%を占めていました。
    そのほか、求人サイトやインターネット掲示板から応募した人も、それぞれ数%程度いました。

    出典:「令和6年警察白書 第1部 特集・トピックス 匿名・流動型犯罪グループに対する警察の取組 p12」(警察庁)

    特にSNS経由では、トクリュウの首謀者や幹部が使い捨てるために、末端実行犯の勧誘が盛んに行われていることが想定されます。

2、トクリュウが起こした事件の具体例

トクリュウが起こしたものとして、近年のニュースで大々的に報道されたのが、いわゆる「ルフィ事件」です。

令和4年から令和5年にかけて、全国各地において連続強盗事件が発生しました。
連続強盗事件の首謀者はフィリピンに収監中だった男性で、首謀者を含む4人がSNSなどを通じて実行犯を集め、強盗の実行を指示していました。
首謀者が「ルフィ」と名乗っていたことから、一連の事件は「ルフィ事件」と呼ばれるようになりました。

ルフィのグループは同様の手口で多数の特殊詐欺や強盗事件を起こし、そのうち1件では被害者が死亡しました。
強盗殺人という極めて重大な事案が発生したことにより、トクリュウの危険性が広く認知されるきっかけになった事件といえます。

3、トクリュウの犯罪から身を守る方法

「アルバイト感覚で応募したら、トクリュウによる犯罪の実行犯にされてしまった……」という最悪の事態は避けなければいけません。
トクリュウの勧誘から身を守り、犯罪行為へ加担しないようにするためには、以下の点に十分注意しましょう。

  1. (1)個人情報を簡単に教えない

    SNSなどで知り合った人に対して、個人情報を簡単に教えることは避けるべきです。

    トクリュウの首謀者や幹部は、個人情報を基にしてしつこく連絡をしてきたり、家族に危害を加えるなどと言って脅迫してきたりするおそれがあります。
    その結果、不本意にトクリュウへ参加し、実行犯などとして逮捕されてしまうケースがよく見られます。

    トクリュウに弱みを握られないようにするため、よく知らない人に個人情報を教えてはいけません。

  2. (2)金額が高すぎる求人に応募しない

    普通のアルバイトなどでは到底得られないような、短期間で高額な報酬を提示する求人を見つけたら、何らかの犯罪行為が絡んでいることを疑いましょう。

    少々報酬が高いように見えても、犯罪によって逮捕・起訴されて有罪判決を受け、その後の人生が台無しになるリスクとは全くつり合いません。報酬額が高すぎる求人は非常に怪しいので、応募は避けましょう。

  3. (3)預貯金口座や携帯電話の名義貸しをしない

    SNSなどで募集されている「闇バイト」の中には、預貯金口座や携帯電話の名義貸しと引き換えに高額の報酬を支払う内容のものがあります。

    預貯金口座や携帯電話の名義貸しは犯罪行為であり、加担するとそれだけで懲役や罰金などの処罰の対象となります。また、他人名義の口座や携帯電話を利用しようとするのは、犯罪グループ以外にほとんどあり得ません。
    預貯金口座や携帯電話の名義貸しを勧誘されても、絶対に応じてはいけません。

  4. (4)怪しいと感じたら警察に通報する

    SNSなどを通じて、怪しいバイトなどの勧誘を受けた場合には、すぐに警察へ通報(相談)しましょう。
    警察の助言を受けて行動すれば、自分が犯罪に加担することを防げるとともに、ほかの人が犯罪の勧誘に巻き込まれる事態も防ぐことができます。

4、刑事手続きの流れ

トクリュウによる犯行に参加した人は、詐欺罪・窃盗罪・強盗罪などによって逮捕され、刑事罰を受けるおそれがあります。その際の刑事手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。

  1. (1)捜査・被疑者の身柄拘束(逮捕・勾留)

    捜査機関(=警察と検察)は、トクリュウによる犯罪について水面下で捜査を行います。

    被疑者が特定できた段階で、証拠隠滅や逃亡のおそれがあれば逮捕して身柄を拘束します。逮捕から勾留請求までの期間は最長72時間ですが、勾留へ移行してさらに最長20日間(通算最長23日間)拘束されることもあります。

    逮捕・勾留された被疑者は、警察官や検察官による取り調べを受けます。取り調べに対しては、答えても答えなくても構いません。

    なお、身柄を拘束された被疑者は、弁護人を選任する権利があります。弁護人に依頼するための費用を賄えない場合は、国選弁護人の選任を求めることが可能です。

  2. (2)起訴・不起訴

    勾留期間が満了するまでに、検察官が被疑者を起訴するかどうかを判断します。

    不起訴となれば、その時点で身柄が解放されます。起訴された場合は、呼称が「被告人」へと変わり、引き続き身柄が拘束されます。

    起訴前と異なり、起訴後は裁判所に対する保釈請求が可能です。ただし、トクリュウのように共犯者がいる場合は、証拠隠滅のおそれを理由に保釈が認められないこともあります。

  3. (3)公判手続き(刑事裁判)

    起訴から1か月程度が経過した段階で、裁判所の法廷において公判手続き(刑事裁判)が行われます。

    公判手続きでは、検察官が被告人の犯罪事実を立証します。被告人は、罪を認めて情状酌量を求めるか、または罪を否認して争うことになります。

  4. (4)判決・刑の執行

    検察官がすべての犯罪要件を立証できた場合に限り、裁判所は被告人に対して有罪判決を言い渡します。
    これに対して、犯罪要件のうち1つでも立証が成功しなかった場合には、裁判所は被告人に対して無罪判決を言い渡します。

    第一審判決については、高等裁判所に対して控訴をすることが可能です。また、控訴審判決に対しては、最高裁判所に対して上告をすることができます。
    控訴・上告の期限は、いずれも判決が言い渡された日の翌日から14日間です。

    有罪判決が確定した場合には、原則として刑が執行されます。ただし、執行猶予がついた場合には、身柄は釈放され一定期間善行を保てば刑務所に入らなくて済みます。

5、まとめ

トクリュウとは「匿名・流動型犯罪グループ」のことで、SNSの発展などに伴って出現した、新しい形態の犯罪集団です。

トクリュウによる犯罪に巻き込まれないためには、個人情報を簡単に教えない、報酬金額が高すぎる求人に応募しない、預貯金口座や携帯電話の名義貸しをしないなどの対策を徹底しましょう。
楽して稼ぎたいからと気軽な気持ちで足を踏み入れてしまったばかりに、前科がついてその後の人生が滅茶苦茶になってしまう可能性もあります。

SNSや求人サイトで見つけた求人内容が少しでも怪しいと感じたら、速やかに警察へ通報しましょう。自分がトクリュウによる犯罪に加担することを防げるとともに、トクリュウの勧誘にだまされてしまう新たな被害者の発生を防ぐことができます。

トクリュウから身を守るためには、その特徴やよくある勧誘の手口、関与する犯罪のパターンなどについて、正しい知識を身に着けておくことが大切です。

警察庁のウェブサイトなどでもトクリュウについて注意喚起が行われているので、参考にしてください。

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