クレジットカードの不正利用で逮捕|罰則や逮捕を回避する方法
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令和7年、福島市在住の施設職員の男が私電磁的記録不正作出・同供与と窃盗の疑いで逮捕されました。
クレジットカードの不正利用(以後「クレカ不正利用と表記」)で逮捕されると長期間の身柄拘束や起訴されて有罪になるリスクがあります。
万が一クレカ不正利用をしてしまったときはすぐに適切な対応をすることが重要です。クレカ不正利用で成立しうる犯罪と逮捕を回避する方法などについて、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。


1、クレジットカードの不正利用で成立しうる犯罪とは?
クレカ不正利用をしたときに成立しうる犯罪には、以下のようなものがあります。
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(1)詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪
他人名義のクレジットカードを利用して店で買い物をすると詐欺罪が成立します(刑法246条)。
本来クレジットカードは名義人本人しか利用することができないものですので、本人に成りすまして他人のクレジットカードを利用するという点でカード会社をだましているといえるからです。
また、ネットショップの決済で他人名義のクレカ不正利用を行うと電子計算機使用詐欺罪が成立します(刑法246条の2)。
ネットショップでの決済は、直接人を欺いていないため詐欺罪は成立しませんが、電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えているため電子計算機使用詐欺罪に問われることになります。
詐欺罪または電子計算機使用詐欺罪が成立すると10年以下の懲役に処せられます。 -
(2)支払用カード電磁的記録不正作出・提供罪
不正に入手した他人のクレジットカード情報を使用して、偽造カードを作成すると支払用カード電磁的記録不正作出罪が成立します(刑法163条の2)。いわゆる「スキミング」と呼ばれる行為により偽造カードを作成する行為がこれにあたります。
また、スキミングによる偽造カードを使用すると支払用カード電磁的記録提供罪が成立します。支払用カード電磁的記録不正作出・提供罪が成立すると10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。 -
(3)不正アクセス禁止法違反
不正アクセス禁止法では、他人のIDやパスワードを不正に入手する行為を禁止しています。たとえば、偽サイトなどを作成してカード情報などの個人情報を盗み取る「フィッシング」と呼ばれる行為をすると不正アクセス禁止法違反に問われる可能性があります。
不正アクセス禁止法違反が成立すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
2、クレジットカードの不正利用で逮捕されたあとの流れ
クレカ不正利用で逮捕されると以下のような流れで刑事事件の手続きが進んでいきます。
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(1)逮捕・送検
クレカ不正利用で逮捕されると警察署に連行され、警察による取り調べが始まります。警察による取り調べが一通り終わると被疑者の身柄は検察官に送致されます。
検察官は、被疑者に対する取り調べを行い、身柄拘束を続けるかどうかを検討します。引き続き身柄拘束をする必要があると認められるときは、裁判官に勾留請求を行います。
なお、逮捕による身柄拘束には時間制限がありますので、逮捕から48時間以内に検察官送致を行わなければならず、検察官は送検から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留請求を行わなければなりません。 -
(2)勾留
裁判官は、被疑者への勾留質問をしたうえで、勾留を許可するかどうかの判断をします。
勾留が許可されると原則として10日間の身柄拘束となり、勾留延長も許可されるとさらに最長10日間の身柄拘束が続きます。
つまり、逮捕から合計すると最長で23日間の身柄拘束を受けるということになります。 -
(3)起訴・不起訴
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に起訴するか不起訴にするのかを判断します。
不起訴処分になればその時点で被疑者の身柄は解放され、前科が付くこともありません。 -
(4)刑事裁判
検察官が起訴すると、刑事裁判が行われて事件に関する審理が行われます。
クレカ不正使用の罪のうち詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪については、法定刑に罰金が定められていないため、起訴されれば略式命令請求ではなく公判請求となり、執行猶予が付かなければ刑務所に収監されてしまいます。
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3、クレジットカードの不正利用で逮捕を回避するためには?
クレカ不正利用で逮捕されるのを回避するには、以下のような方法を検討するべきです。
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(1)警察に自首する
自首とは、自らの意思で警察や検察などの捜査機関に対して、自分が罪を犯したことを申し出ることをいいます。
自首の法的効果としては、刑の任意的な減軽となっているため、逮捕を回避できる法的効果はありません。しかし、自首をすることで逮捕の要件である逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがないと示すことができるため、逮捕のリスクを減らすことが可能です。
ただし、自首は、捜査機関に犯罪事実や犯人が発覚する前に行わなければなりません。タイミングが遅れると自首の法的効果を得られませんので注意が必要です。 -
(2)被害者との示談を成立させる
クレカ不正利用で逮捕を回避するなら早期に被害者との示談を成立させることが重要です。
捜査機関に犯罪事実が発覚する前に示談を成立させることができれば、事件化を防げる可能性があります。また、被害届が提出された後でも逮捕される前に示談を成立させることができれば、逮捕を回避できる可能性が高くなります。
このように、逮捕を回避するには早期の示談が大切ですので、クレカ不正利用が発覚した場合には、速やかに弁護士に依頼し、被害者との示談交渉に着手することが望ましいでしょう。 -
(3)刑事事件に強い弁護士に相談する
クレカ不正利用による逮捕を回避するには、刑事事件に強い弁護士に相談し、逮捕回避に向けた弁護を依頼することをおすすめします。
刑事事件に詳しい弁護士であれば逮捕を回避するためのポイントやノウハウを熟知していますので、効果的な弁護活動により逮捕を回避できる可能性を高めることができます。
4、クレジットカードの不正利用で逮捕されそうな場合は弁護士へ相談を
クレカ不正利用により逮捕されそうなときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)刑事事件となることを回避できる
クレカ不正利用で逮捕されそうな状況だったとしても、弁護士に依頼することで、速やかに被害者との示談交渉を進め、刑事事件を回避できる可能性を高めることができます。
被疑者本人では示談を拒否されてしまうケースも多いですが、弁護士が窓口になって交渉することで、早期に示談が成立する可能性が高まります。 -
(2)逮捕された場合も早期釈放を獲得できる
クレカ不正利用で逮捕されてしまったとしても、弁護士のサポートを受けることで早期釈放が期待できます。
逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間にも及びますが、勾留を阻止することができれば身柄拘束期間を最長で72時間まで短縮することが可能です。
弁護士は、限られた時間の中で迅速に検察官や裁判官へ働きかけ、勾留阻止に向けた活動によって早期釈放の可能性を高めます。 -
(3)不起訴獲得のための弁護活動を行ってもらえる
日本の刑事事件では、起訴されるとほとんどが有罪になってしまいますので、前科が付くことは避けるのが非常に困難になります。前科を避けるには不起訴処分を獲得することが不可欠といえるでしょう。
特に、クレカ不正利用事件では、不起訴を獲得するためには被害者との示談が重要になります。示談成立までにはある程度の時間がかかりますので、クレカ不正利用をしてしまったときはすぐに弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
クレカ不正利用は、さまざまな犯罪に該当する行為です。被害者から被害届が提出されてしまうと、逮捕されるリスクが高くなりますので、逮捕を回避するには、事件化する前に示談を成立させることが重要です。
それには刑事事件の実績が豊富な弁護士によるサポートが重要ですので、まずはベリーベスト法律事務所 郡山オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています