任意整理における将来利息とは? 計算方法や減額できないケース

2024年07月17日
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任意整理における将来利息とは? 計算方法や減額できないケース

2022年に福島県内の地方裁判所で受理された破産の件数は773件、個人再生の件数は108件でした。

借金問題を解決する債務整理には、自己破産や個人再生のほかに「任意整理」という方法が多くの方に利用されています。任意整理は、「将来利息」をカットし、その上で分割返済するのが一般的な方法です。将来利息のカットといっても、どれくらい借金が減額されるのかピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には大きなメリットがあります。

本コラムでは、任意整理でポイントとなる将来利息や経過利息や遅延損害金などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

出典:「司法統計」(最高裁判所)

1、将来利息とは? 他の利息との違い

任意整理をする際によく聞くワードである「将来利息」について解説します。

  1. (1)返済しても借金がなかなか減らない原因|将来利息

    将来利息とは、借金の返済期間中に発生する利息のうち、ある時点から将来に向かって発生する利息のことをいいます

    借金の返済を続けているにもかかわらず、なかなか借金が減らない場合がありますが、その大きな原因が将来利息です。

    借金を毎月分割して返済している場合、返済金はまず1か月分の利息に充当され、残りが元本に充当されるのが一般的です。そのため、返済金がそれほど多くない場合は、ほとんどが利息の返済に消えてしまい、借金の残額がなかなか減らないということが起きてしまいます。

  2. (2)経過利息や遅延損害金(延滞利息・遅延利息)との違い

    経過利息とは、借金の返済期間中に発生する利息のうち、ある時点までに発生した利息のことを指します。

    返済日までに利息として金額が確定したものが経過利息、返済日から完済までに発生する利息が将来利息ということになります。

    遅延損害金は、延滞利息や遅延利息といわれることもありますが、支払期限から延滞した際に発生する違約金としての性質があるものです。借金の返済を延滞した場合、支払期限までに発生するのが経過利息、支払期限の翌日から発生するのが遅延損害金です。

    遅延損害金は、利息よりも高い利率とされることが多く、法律上の上限利率は以下のように定められています。

    当初の元本の額 利息 遅延損害金
    銀行や貸金業者等 個人間
    10万円未満 年20%

    年20%
    年29.2%
    10万円以上
    100万円未満
    年18% 年26.28%
    100万円以上 年15% 年21.9%
  3. (3)任意整理で将来利息をカットしてもらうメリット

    任意整理は、債務者と債権者が話し合いを行い、返済条件を再設定することにより借金問題を解決する方法です。

    弁護士などの法律の専門家が任意整理を行う場合、返済条件を再設定する和解契約をする日以降の将来利息は免除してもらうのが一般的です。

    将来利息をカットしてもらうと、返済総額が固定されてそれ以上増えないのが大きなメリットですが、具体的に返済額がどのようになるのか見てみましょう。

    例として、100万円の借金を毎月3万円ずつ返済するケースで返済額をシミュレーションすると以下のようになります。

    • 将来利息をカットした場合
      返済回数34回・返済総額100万円

    • 将来利息(年15%)が発生する場合
      返済回数44回・返済総額約130万500円


    任意整理では個人再生や自己破産のように元本を減免してもらうことは困難なので、その効果に疑問を感じられることもあるようです。

    しかし、任意整理をすると返済総額が増えないので、毎月の返済額を抑えることができ、無理のない返済計画を立てることも可能なので、多くの方にとって有効な方法といえるでしょう

2、利息の計算方法

借金の返済方法でよく利用されるのは、「元利均等返済」「元金均等返済」です。
それぞれの返済方法の特徴と利息の計算方法について解説します。

  1. (1)元利均等返済

    元利均等返済は、毎月の返済額を一定額に固定する返済方法です。返済を始めた当初は、経過利息が大きいため元本が減りにくく、返済総額も大きくなります。

    300万円の借金を毎月10万円ずつ元利均等で返済すると、借金残額は以下のように推移します。

    (利息 年15%で固定)
    返済回数 返済額 元本充当 経過利息 残高
    1 100,000 62,500 37,500 2,937,500
    10 100,000 69,893 30,107 2,338,646
    20 100,000 79,138 20,862 1,589,814
    30 100,000 89,606 10,394 741,933
    38 83,566 82,534 1,032 0
    返済総額 3,783,566 ※1か月分の経過利息は「残高×15%÷12」で計算


    経過利息の計算方法は、次のとおりです。

    経過利息
    =残高×利率(15%)×借入日または前回返済日からの経過日数÷365日(うるう年は366日)


    10回目の返済までは、経過利息が3万円以上発生していますが、返済が進むと残高が減るペースも上がっていきます。

  2. (2)元金均等返済

    元金均等返済は、毎月の元本の返済額を決めて、経過利息を上乗せして返済する方法です。
    毎月決まったペースで残高が減っていくので、返済総額は少なくなりますが、返済当初の返済額は大きくなります。

    上記のケースと同様に300万円の借金について、毎月10万円ずつ元本均等で返済すると、返済額は以下のようになります。

    (利息 年15%で固定)
    返済回数 返済額 元本充当 経過利息 残高
    1 137,500 100,000 37,500 2,900,000
    10 126,250 100,000 26,250 2,000,000
    20 113,750 100,000 13,750 1,000,000
    30 101,250 100,000 1,250 0
    返済総額 3,581,250 ※1か月分の経過利息は「残高×15%÷12」で計算


    元利均等返済よりも返済総額は約20万円少なくなりますが、返済当初の返済額は大きくなります。

3、任意整理で将来利息を減額・免除できない7つのケース

任意整理を行う際、多くの場合、将来利息の減額や免除が期待できますが、すべてのケースで可能なわけではありません

任意整理で将来利息が減額・免除されないケースや、任意整理が向いていないケースを解説します。

  1. (1)もともと利息の利率が低い

    借入時の利息の利率が低ければ、発生する利息も低額となり、任意整理の効果はあまり期待できません。

    また、奨学金のように低利の貸付けをしている公的な事業者の場合は、利用者の公平な負担により運営するのが建前なので、任意整理には応じないのが一般的です。ただし、公的な事業者は返済減免や期限猶予など、別の救済制度を利用できる場合もあります。

  2. (2)抵当権などの担保を設定している

    住宅ローンや自動車ローンのように、抵当権や所有権留保などの担保を設定している借金は、任意整理をすると担保物件の不動産や自動車を手放すことになる可能性が高くなります。

    これらの借金は、任意整理の対象から除外するか、個人再生の住宅ローン特則や別除権協定を利用して、担保権の実行を防ぐ方法が考えられます。

  3. (3)ほとんど返済実績がない

    債務整理全般にいえることですが、借り入れをしてすぐに債務整理をすると、債権者はほとんど収益を得られていないことから、態度を硬化させることが多くなります。

    任意整理をする場合は、少なくとも6か月程度の返済実績がなければ、任意整理や将来利息の減免に応じてもらえないケースもあります。

  4. (4)過去に任意整理している

    再度の任意整理は、債権者に返済能力に疑問を持たれて、難色を示されることがあります。
    病気や収入の減少のようにやむを得ない理由があれば、債権者の理解を得られる可能性もありますが、2度目の任意整理はハードルが高くなると考えたほうがいいでしょう。

  5. (5)判決などの債務名義を取得されている

    民事裁判や支払督促など裁判所の手続により、債権者に判決や仮執行宣言付き支払督促など強制執行ができる文書(債務名義)を取得されている場合は、任意整理の条件が悪くなることがあります。

    たとえば、将来利息や遅延損害金の全部カットには応じない、短期間での分割返済を求めるなど、不利な条件が提示されることもあります。

    なお、すでに債権者から強制執行を受けている場合、任意整理では強制執行を停止させることはできないので、自己破産や個人再生をしたほうがいいでしょう。

  6. (6)5年を超える長期の分割返済は難しい

    任意整理をする場合、通常は3年以内、長くても5年以内で分割返済するのが一般的ですが、これを超える長期の分割返済には応じてもらえないケースが多くなります。

    返済資金があまり用意できない場合や、借金の総額が大きい場合は、自己破産や個人再生による解決が選択肢となります。

  7. (7)債権者が会社の方針として応じない

    貸金業者の中には、会社の方針として、任意整理には一切応じない、あるいは将来利息の全部免除には応じない業者も存在します。

    任意整理には強制力がないため、債権者に和解を強いることはできません。任意整理に応じない業者に対しては、任意整理の対象から除外したり、自己破産や個人再生を利用したりして対処することになります。

4、任意整理を弁護士に相談するメリット

任意整理を弁護士に相談することで、専門的な知識と経験をいかした有利な解決策を得ることができます。
その具体的なメリットについて詳しく説明します。

  1. (1)任意整理は弁護士など専門家が行わなければ難しい

    将来利息のカットなど、実効性のある和解条件を債権者に受け入れてもらうには、弁護士など、交渉の実績がある法律家が交渉を行うのが得策です。

    一般の方が直接債権者に任意整理を申し入れた場合、返済スケジュールの見直しくらいにしか応じてもらえず、かえって不利な条件での和解となってしまうリスクもあります。

    借金トラブルの解決実績がある弁護士であれば債務整理全般の専門知識を持っています。そのため、債権者も弁護士から任意整理の申し入れがなされると、自己破産や個人再生よりも損失が少ない任意整理に前向きに応じやすくなるという面があるのです。

  2. (2)催促がストップする

    弁護士が任意整理など債務整理を受任すると、債権者に「受任通知」を送付しますが、これを受領した貸金業者やクレジット会社は直接催促をすることができなくなります。

    具体的には、電話や郵便物、訪問などによる催促が一切なくなります。また、弁護士が受任した以降は、基本的にすべての返済を停止するので、落ち着いた環境で債務整理の費用を積み立てることも可能です。

  3. (3)将来利息以外にも減額の可能性がある

    弁護士は、将来利息だけでなく、経過利息や遅延損害金のカットなど、最大限有利な条件で和解できるよう交渉します。

    また、長期間取引がある場合は、過去の取引にさかのぼって適正な利息計算がなされているかチェックを行います。

  4. (4)任意整理以外の債務整理も提案してもらえる

    債務整理には、任意整理以外にも自己破産や個人再生といった方法があります。これらの方法はそれぞれ特徴と条件が異なるため、個々の状況に最適な解決策は異なります。

    弁護士に相談することで、ご自身の状況に合った最適な債務整理の方法を提案してもらえます。

5、まとめ

将来利息は、借金の返済期間中に発生する利息のうち、将来に向かって完済まで発生する利息で、返済してもなかなか借金が減らない原因にもなっています。

任意整理を行うと、将来利息をカットしてもらうことで返済総額が固定され、無理のない返済計画を立てることができるというメリットがあります

ただし、任意整理は強制力のある手続ではないので、必ずしも将来利息の減免などに応じてもらえるわけではありません。弁護士と相談して、自己破産や個人再生など別の方法による解決も視野に入れて置く必要があるでしょう。

借金の問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスまでお気軽にご相談ください。最適な債務整理のご提案や、より有利な条件による任意整理の追求など、全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています