勝手に別居すると離婚に不利になる? 別居を考えたら準備すべきこと
- その他
- 勝手に別居
- 不利
郡山市が公表している統計資料によると、令和3年の郡山市内の離婚件数は527件でした。同年の婚姻件数が1457件でしたので、約3組に1組の夫婦が離婚をしていることになります。
夫婦仲が悪化すると、お互いに顔を合わせて生活するのも苦痛に感じ、離婚前に別居をすることがあります。しかし、夫婦でしっかりと話し合った結果、別居するのであれば問題はありませんが、勝手に別居を始めてしまうと、今後の離婚で不利になる可能性がありますので注意が必要です。
今回は、勝手に別居をすると不利になる理由や別居を考えた際に準備すべきことなどを、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。
1、勝手に別居をすると不利になると言われる理由
離婚前に勝手に別居をしてしまうと、不利になる可能性があります。
-
(1)夫婦には同居義務がある
民法では、夫婦の基本的な義務として「同居義務」が定められています(民法752条)。夫婦である以上、一緒に生活しなければならず、正当な理由なく別居すると同居義務違反となってしまいます。
しかし、夫婦の関係性が悪化してくると喧嘩の絶えない状態となり、一緒に生活することに苦痛を感じることもあります。そのような状況では、同居したまま離婚の話し合いを進めるのは難しく、むしろ離婚前に別居した方がスムーズに話し合いを進めることができる可能性があります。
つまり、夫婦に同居義務があると言っても必ずしも別居をしてはいけないというわけではありません。別居をしても同居義務違反にならないケースをしっかりと押さえておくことが大切です。 -
(2)勝手に別居をすると「悪意の遺棄」にあたる可能性がある
勝手に別居をすると不利になると言われるのは、「悪意の遺棄」にあたる可能性があるからです。
悪意の遺棄とは、法定離婚事由として民法上規定されている事由の1つで、これに該当してしまうと以下のような不利益が生じます。悪意の遺棄をすると起こりうる不利益
- 有責配偶者となり、自ら離婚請求をすることができない
- 離婚慰謝料を請求される可能性がある
- 婚姻費用を請求しても、減額されてしまう可能性がある
もっとも、勝手に別居をすることのすべてが悪意の遺棄に該当するわけではありません。別居をするに至った経緯に正当な理由がある場合には、悪意の遺棄にはなりません
2、離婚前の別居が不利になるケースとならないケース
離婚前の別居であっても、不利になるケースと不利にならないケースがあります。
-
(1)不利になるケース
離婚前の別居が不利になるケースとしては、以下のケースが挙げられます。
① 夫婦関係に問題がないのに別居をする
夫婦関係に特に問題がないにもかかわらず、一方的に家を出ていったようなケースは、同居義務違反にあたる可能性があります。
たとえば、他に好きな人ができたなどの理由で勝手に家を出ていくようなケースです。
② 障害のある配偶者をおいて別居をする
夫婦には、同居義務以外にも協力義務および扶助義務が課されています。
たとえば、配偶者が病気や障害などにより1人で生活するのが困難な状況にある場合には、妻もしくは夫が身の回りの世話や援助をする必要があります。「介護に疲れた」などの理由で勝手に家を出て行ってしまうと、同居義務違反となる可能性があります。
③ 暴力を振るって配偶者を追い出した
自分が家を出ていったのではなく、相手が家を出ていったとしても、その経緯によっては自宅に残った側の同居義務違反が問われることがあります。
たとえば、夫が妻に対して暴力を振るったため、妻が自宅を出て行ってしまったというケースでは、同居できなくなった原因は夫にありますので、夫の同居義務違反となる可能性があります。 -
(2)不利にならないケース
離婚前の別居であっても、以下のようなケースであれば不利になる可能性はありません。
① 別居に合意をしている
別居前に夫婦で話し合いを行い、お互いの合意の上で別居をする場合には、同居義務違反とはなりません。離婚を前提として別居をするのであれば、まずは、相手と話し合いをしてから別居をするようにしましょう。
② 配偶者からDVやモラハラを受けている
配偶者からDVやモラハラを受けている状況だと、別居をしたくても合意をしてくれず、別居を伝えたことでDVやモラハラが悪化する可能性があります。そのため、このような事情がある場合には、相手の同意を得ることなく別居をしても、同居義務違反にはなりません。
③ すでに婚姻関係が破綻している
すでに婚姻関係が破綻している場合には、勝手に別居をしたとしても悪意の遺棄には該当しません。夫婦喧嘩が絶えない状況で、家庭内では一切会話や接触がないような状態であれば、同意なく別居をしたとしても不利になることはないでしょう。
3、別居を考えたら準備すべきこと
離婚を前提とした別居をする際には、以下のような準備が必要です。
-
(1)夫婦の財産の把握
離婚時には、財産分与により夫婦の共有財産の清算を行うことができます。財産分与では、婚姻中に夫婦の協力によって形成された財産が対象となりますので、適正な財産分与を行うためには、正確に財産を把握することが重要になります。
別居後は相手の所有財産を調べるのが難しくなりますので、可能な限り、同居中から相手の財産を調べるようにしましょう。 -
(2)慰謝料請求のための証拠収集
相手から暴力を受けていたり、相手が不倫をしたりしているような場合には、離婚時に慰謝料を請求することができます。
ただし、慰謝料を請求するには、請求者の側で相手の有責性を立証していかなければなりません。そのためには、証拠が不可欠となりますので、離婚を切り出す前に十分な証拠を確保しておくことが大切です。
たとえば、相手が不倫をしている場合には、以下のようなものが証拠になります。- 不倫相手とホテルに泊まった状況を撮影した写真や動画
- 不倫相手との肉体関係がわかる内容のメールやLINE
- ラブホテルに泊まった際の領収書
- 裸で抱き合っている写真
これらの証拠は、別居をしてしまうと入手するのが難しくなりますので、同居中から少しずつ集めておくようにしましょう。
-
(3)住まいや生活費の確保
別居をするためには、別居先の住まいを確保する必要があります。実家に住むというのもひとつの手段となりますが、それができない場合にはアパートなどを探さなければなりません。希望する条件の物件はすぐに見つからないこともありますので、早めに探しておくことが大切です。
また、別居をする際には、引っ越し費用、家具家電の購入費用、新居の初期費用など多額のお金がかかります。別居中の生活費については、次章で後述する婚姻費用を請求することで確保することができますが、別居の準備費用については、ご自身の蓄えから支払う必要があります。そのため、別居前からある程度のお金をためておくことが必要になります。
4、別居中の生活費を配偶者に請求するには?
配偶者の収入によって生計を立てていた場合、別居中の生活費を「婚姻費用」として請求することができます。以下では、婚姻費用の請求方法について説明します。
-
(1)相手との話し合い
婚姻費用の金額や支払い方法は、まずは相手との話し合いにより決めるのが基本になります。別居中の経済的な不安を少しでも解消するためにも、別居する前にしっかりと取り決めておくことが大切です。
相手との話し合いにより婚姻費用の合意に至ったときは、口約束だけで終わらせてしまうのではなく、必ず合意書などの書面を作成するようにしましょう。 -
(2)話し合いで解決できないときは家庭裁判所の調停または審判
当事者同士の話し合いで婚姻費用の合意に至らないときは、家庭裁判所に婚姻費用分担調停の申立てを行います。調停は、あくまでも話し合いの手続きになりますので、裁判所が婚姻費用の金額を決定してくれるわけではありません。
しかし、裁判所の調停委員が関与して話し合いが進められますので、当事者同士の話し合いに比べてスムーズな話し合いが期待できる手続きです。
もし調停でも合意に至らず不成立となった場合は、自動的に審判手続きに移行します。審判では、裁判所が一切の事情を考慮して適切と考える婚姻費用の金額を決定してくれます。
なお、調停や審判では、裁判所が公表している婚姻費用算定表が利用されますので、ある程度の金額の見込みは事前に把握することができます。
5、まとめ
夫婦には同居義務がありますので、正当な理由なく勝手に別居を始めてしまうと、離婚で不利な扱いを受ける可能性があります。そのため、まずは夫婦で話し合いをしてお互いの合意のうえ別居をするべきでしょう。
ただし、一定の事情がある場合には、合意なく別居をしたとしても不利になるおそれはありません。どのような事情があれば不利にならないかは、ケース・バイ・ケースですのでまずは、離婚トラブルの解決実績がある弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスは離婚トラブルのご相談を随時受け付けております。離婚を前提とした別居をお考えの場合など、離婚トラブルについて親身にお話を伺いますので、まずはお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|