オーディション商法とは? 注意したいタレントやモデルの契約トラブル
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福島県郡山市では、生活のなかで生じた契約や悪質商法などのようなさまざまなトラブルについて、「消費生活センター」で無料相談を受け付けています。
10代や20代の女性を中心に、オーディション商法と呼ばれる消費者トラブルが増加していることをご存知でしょうか。芸能人にあこがれる気持ちにつけ込まれ、甘い言葉をかけられると「自分でも芸能人になれるかもしれない」という期待を抱いてしまい、高額なマネジメント契約をしてしまうことがあるようです。
このようなオーディション商法の被害にあってしまった場合には、どのように対応したらよいのでしょうか。今回は、オーディション商法の概要とその対処法について、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。
1、オーディション商法の概要と被害の推移
オーディション商法とは、どのような手口なのでしょうか。以下では、オーディション商法の概要について説明します。
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(1)オーディション商法とは
オーディション商法とは、オーディションの呼び出しをされた応募者が、「レッスン料」「事務所登録費用」「宣材写真の撮影費用」などの名目で高額な金銭を要求されるような手口のことです。
オーディション商法の被害者は、芸能人にあこがれる気持ちなどにつけ込まれます。たとえば、「あなたには才能がある」「このままでは厳しいがレッスンをすればデビューできる」など、甘い言葉や不安を煽る言葉で契約をすすめられることで、具体的な契約内容を確認することなく契約に応じてしまう場合があるのです。
しかし、実際は約束どおりにデビューをさせてもらえずに、レッスン料などの名目で高額な金銭の支払いを求められます。すべてのオーディションが詐欺というわけではありませんが、高額な金銭を要求するものについては、オーディション商法を疑ったほうがよいかもしれません。 -
(2)若い女性を中心にオーディション商法の被害が増えている
国民生活センターが公表するPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)の統計データによると、タレント・モデルなどの契約に関する消費者トラブルの相談件数は、近年600~700件前後で推移しています。
そのうち、20歳未満および20歳代の若者が被害者になっているものが約70%を占めているようです。
また、男女別にみると、女性の相談件数が66%を占めていますので、10代や20代の女性を中心にオーディション商法の被害が出ているといえるでしょう。
2、オーディション商法はクーリングオフの対象になる?
オーディション商法によって契約をしてしまった場合には、クーリングオフの対象になるのでしょうか。
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(1)クーリングオフとは
クーリングオフとは、事業者による強引な勧誘などによって、消費者が考える余裕のないまま契約をしてしまうことによる被害を防ぐための制度です。
クーリングオフの制度を利用することによって、一定期間内に限り、無条件で契約を解除することができます。そのため、消費者被害を救済する強力な手段となります。
口頭によるクーリングオフは、後日トラブルのもとになりますので、必ず書面による方法で行いましょう。
書面ではハガキを投函する方法もありますが、悪質な業者が相手だと「ハガキが届いていない」などと言われるリスクが考えられます。そのようなリスクを回避するためにも、多少費用はかかりますが、配達証明郵便や内容証明郵便を利用するのが確実です。 -
(2)オーディション商法でもクーリングオフの対象になるものがある
注意点として、オーディション商法のすべてがクーリングオフの対象になるわけではありません。
しかし、「アポイントメントセールス」や「キャッチセールス」など特定商取引法の訪問販売によって契約をした場合には、法定書面を受け取った日から8日以内であればクーリングオフをすることができます。① アポイントメントセールス
アポイントメントセールスとは、本来の販売目的である商品以外のものを告げて店舗などに呼び出したり、他の人に比べて著しく有利な条件で契約できると誘って店舗などに呼び出して契約をしたりすることです。
たとえば、「オーディションに合格しました」などと告げて事務所に呼び出し、レッスン契約を行うこともアポイントメントセールスにあたると言えるでしょう。
② キャッチセールス
キャッチセールスとは、路上や街頭などで呼び止めて、事務所などに連れて行き契約をさせる方法です。路上でスカウトが「芸能界デビューしませんか?」などと相手に告げ、事務所に呼び出してモデル契約や事務所所属契約を行うことがキャッチセールスに該当します。 -
(3)クーリングオフ以外で契約を解除する方法
クーリングオフの対象になるオーディション商法での契約であれば、クーリングオフをすることによって、無条件で契約を解除することができます。
しかし、クーリングオフ対象外の契約であったり、クーリングオフの期間が経過してしまった場合には、以下の方法を検討することが必要です。① 未成年者取消し
未成年者は、成人に比べて判断能力が未熟であると考えられています。そのため、未成年者を保護する目的で、保護者などの法定代理人の同意を得ることなく契約をした場合には、法定代理人または未成年者本人が契約を取り消すことが可能です。
オーディション商法によって、レッスン契約やマネジメント契約をしてしまったという場合でも、契約の当事者が未成年者であった場合には契約の取消しができます。
② 詐欺・強迫による取消し
事業者が消費者を騙したり、脅したりして契約をさせた場合には、詐欺または強迫を理由として、当該事業者との契約を取り消すことが可能です。
③ 債務不履行による契約解除
契約当事者は、相手と契約を交わしたら、契約内容に従って義務を履行する責任があります。契約の相手が契約どおりに対応をしてくれない場合には、債務不履行を理由として契約を解除することができます。
たとえば、レッスン契約を締結し、レッスン料を支払ったにもかかわらずレッスンが行われないような場合です。
④ 消費者契約法による取消し
事業者からの不当な勧誘によって契約を締結させられた場合には、消費者契約法に基づいて契約を取り消すことができるケースがあります。
不当な勧誘としては、以下のものが挙げられます。- うそを言われた(不実告知)
- 不利になることを言われなかった(不利益事実の不告知)
- 必ず儲かるからと言われた(断定的判断の提供)
- 通常の量を著しく超えた物の購入を勧誘された(過量契約)
- お願いしても帰ってくれない(不退去)
- 帰りたいのに帰してくれない(退去妨害)
3、令和4年からは18歳も成人扱いになったことに注意
上記のように契約当事者が未成年者であった場合には、未成年者取消権によって契約を取り消すことができます。
未成年者に関する注意点としては、民法改正によって、令和4年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりました。これによって、これまで未成年者として未成年者取消権が認められていた18歳や19歳の方は、未成年者取消権が認められなくなったことに注意が必要です。
なお、未成年者であるかどうかは、契約時の年齢で判断をします。契約時に18歳未満であれば、その後成人になったとしても、未成年者取消権を行使することは可能です。
4、トラブルに巻き込まれたときの相談先
オーディション商法などの消費者トラブルに巻き込まれた場合には、以下のようなところに相談をしましょう。
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(1)消費者ホットライン
消費者トラブルにあってしまった場合には、消費者ホットラインに相談することができます。
消費者ホットラインとは、全国どこからでも相談ができる電話相談窓口です。消費者ホットラインに電話をすることによって、最寄りの消費生活相談窓口や消費生活センターにつながり、専門の相談員による無料相談を受けることができます。
電話での助言だけでなく、事業者との交渉の手伝い(あっせん)や適切な窓口の紹介なども行ってくれますので、どこに相談をしたらよいかわからないという場合には、まずは消費者ホットラインに電話をしてみるとよいでしょう。 -
(2)弁護士
事業者との具体的な交渉を希望する場合には、弁護士に相談をする方法も手段のひとつです。
弁護士は、本人に代わって相手方との交渉を行うことができますので、契約の解除や取消しなどの法的手段によって、支払ってしまったお金を回収することができる可能性があります。
ただし、弁護士に依頼をすると弁護士費用が生じてしまいますので、事業者に支払った金額によっては、費用倒れになってしまう可能性もあることに注意が必要です。
この点については、相談した時点で弁護士から説明があるため、ご安心ください。
5、まとめ
路上や街頭でのスカウトだけではなく、近年ではSNSやインターネット上の募集広告を見て、自らオーディションに申し込んだことをきっかけにオーディション商法の被害にあう方も増えてきています。
このようなオーディション商法の被害を防止するためには、甘い言葉で誘われたとしても、その場で判断するのではなく、家族や周囲の人に相談をするなど慎重に対応することが大切です。
また、契約をする際にも具体的な契約内容や費用負担などを確認することでトラブルを防ぐことができます。
民法改正によって、未成年者取消しができる年齢も引き下げられていますので、特に被害にあいやすい若年者は慎重に行動するようにしましょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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