ビジネスモデル特許とは何か? 具体例や取り方などを弁護士が解説

2023年10月12日
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ビジネスモデル特許とは何か? 具体例や取り方などを弁護士が解説

郡山市役所が公表する「郡山市統計書 2022(令和4)年版」によると、令和4年の福島県郡山市の人口は、男性16万9名、女性16万4086名で、総計32万4095名でした。

この中には、技術を活用したビジネスモデルの構築に精を出している方もいるでしょう。ビジネスモデル実現に向けた技術発明案を思いついた場合は、他社に無断で盗用されないように「ビジネスモデル特許」の出願を検討することが大切です。

本コラムでは、ビジネスモデル特許の具体例や出願手続き、費用のことなどについて、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、ビジネスモデル特許とは

技術を活用したビジネスモデルについて、他社による盗用を防ぐためには、「ビジネスモデル特許」を取得することが効果的です。

  1. (1)ビジネスモデルを実現するための技術発明に関する特許

    ビジネスモデル特許とは、ビジネスモデルを実現するための技術発明に関する特許のことをいいます。

    特許権は、自然法則を使った技術的思想の創作のうち、高度のもの(=発明、特許法第2条第1項)を保護する知的財産権のひとつです。

    ビジネスモデルそのものはアイデアに過ぎず、技術的思想の創作にあたらないため、特許権の対象になりません。しかし、ビジネスモデルを実現するために何らかの技術的な方法を用いている場合は、その方法について特許権を認められる可能性があります。

    ビジネスモデル特許の取得が認められれば、特定の技術的方法を不可欠の要素とするビジネスモデルについて、他社からの模倣・盗用を防ぐことにつながります

  2. (2)ビジネスモデル特許の取得要件

    ビジネスモデル特許を取得するためには、特許権の取得要件を満たさなければなりません。具体的には、「発明」「産業上の利用可能性」「新規性」「進歩性」の要件を満たすことが求められます。

    <特許権の取得要件>
    ① 発明
    ビジネスモデル特許が認められるためには、それが自然法則を利用した技術的思想の創作であって、かつ高度(発明)であることが必要です。

    ② 産業上の利用可能性(特許法第29条第1項)
    特許権が認められるのは、産業上利用できる発明に限られます。たとえば、学術的・実験的な段階にとどまる発明については、特許権が認められません。

    ③ 新規性(同項各号)
    特許権が認められるのは、まだ公然と知られていない発明に限られます。以下のいずれかに該当する発明は新規性を欠くため、特許権が認められません。
    • 特許出願前に、日本国内または外国において公然に知られた発明
    • 特許出願前に、日本国内または外国において公然に実施された発明
    • 特許出願前に、日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明

    ④ 進歩性(同条第2項)
    特許出願前において、その発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が、公知または公用の発明に基づいて容易に生み出せたと評価すべき発明は、進歩性を欠くため特許権が認められません。

2、ビジネスモデル特許の例

ビジネスモデル特許として著名なものの例として、Amazonの「ワンクリック特許」、TSUTAYAの「レンタル商品返却システム」、いきなりステーキの「ステーキの提供方法及び可動式パーティション」について説明します。

  1. (1)Amazonの「ワンクリック特許」

    • 特許 4959817号
    • 特許権者:Amazon.com, Inc.
    • 出願日:平成10(1998)年9月14日


    インターネット通販事業を営むAmazon社は、ECサイトでユーザーが商品を購入する際、「今すぐ購入」などと表記されている購入ボタンをクリックすることで、簡単に注文が完了する仕組みを考案しました。

    さらに、ワンクリックで決済された複数の注文をひとつにまとめる処理を組み合わせることにより、「ワンクリック特許」として特許権の登録が認められました。

    従来は支払い情報や住所などを逐一入力しなければなりませんでしたが、Amazon社のワンクリック特許により、ECサイトの利便性は大きく向上したと考えられます。

    ワンクリック特許の存続期間はすでに満了して、パブリック・ドメイン(誰でも利用できる状態)となりました。しかし存続期間中から、複数の競合他社がワンクリック特許と同一または類似の仕組みを導入していたため、Amazon社はライセンス料によって大きな利益を得たことでしょう。

  2. (2)TSUTAYAの「レンタル商品返却システム」

    • 特許 4854697号
    • 特許権者:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
    • 出願日:平成20(2008)年3月31日


    レンタルビデオ店の「TSUTAYA」では、客が借りたレンタル商品を郵送で返却できるシステム(=レンタル商品返却システム)を開発しました。

    レンタル商品返却システムでは、利用者が店舗から受け取った専用バッグに商品を入れ、そのバッグをポストに投函すると返却が完了します。

    ポスト投函の状況は、日本郵便が運営する追跡システムを活用して、TSUTAYA側に通知される仕組みです。この追跡システムを活用して返却状況を確認する仕組みについて、ビジネスモデル特許が認められました。

  3. (3)いきなり!ステーキの「ステーキの提供方法及び可動式パーティション」

    • 特許 5946491号
    • 特許権者:株式会社ペッパーフードサービス
    • 出願日:平成26(2014)年6月4日


    ステーキ専門店の「いきなり!ステーキ」では、個々の顧客が任意のグラム数でステーキを注文できることを特徴としています。

    いきなりステーキは顧客間の肉の混同を防止するため、おおむね以下の方法・手順を考案しました。

    • ① まず顧客をテーブルに案内し、テーブル番号が決まる。
    • ② 顧客は、テーブルに備え付けられた番号札を持参して肉のカット場に行き、任意のグラム数の肉を注文する。
    • ③ 厨房スタッフが専用の計量機器を用いて肉をカットし、(誰が注文したかわかるように)肉に印を付けた状態で調理する。
    • ④ 調理が完了した肉を顧客に提供する。


    上記の一連の手順は、顧客間の肉の混同を防止する技術的手段であり、発明に該当すると判断され、ビジネスモデル特許が認められました。

3、ビジネスモデル特許の出願手続き・所要期間・費用

ビジネスモデル特許を取得するためには、特許庁に対して出願を行う必要があります。特許権の取得までには長期間を要し、一定の費用もかかる点にご注意ください。

  1. (1)ビジネスモデル特許の出願手続き

    ビジネスモデル特許の出願手続きは、以下の流れで行います。

    ① 特許出願
    特許庁に対して、書類(願書、明細書、特許請求の範囲、図面など)を提出して特許出願をします。

    ② 方式審査
    特許庁が、手数料の納付などの形式的な要件を満たしているかどうかをチェックします。

    ③ 出願審査請求
    方式審査の完了後、出願日から3年以内に、特許庁に対して出願審査請求を行います。

    ④ 実体審査
    出願審査請求を待って、特許庁が特許要件(産業上の利用可能性・新規性・進歩性)に関する審査を行います。

    ⑤ 特許査定または拒絶査定
    特許庁が特許要件を満たしていると判断した場合、特許査定を行います。特許要件が満たされていないと判断した場合は、拒絶査定を行います。

    ⑥ 特許権の設定の登録
    特許査定がなされた場合、その謄本が送達された日から30日以内に特許料を納付すれば、特許権の設定登録が行われ、登録をもって特許権が発生します。
  2. (2)ビジネスモデル特許の取得にかかる期間

    特許庁が公表する「特許行政年次報告書2022年版」によると、特許権の権利化までの期間は、令和3年度において平均15.2か月でした。平成26年度以降は、権利化までの期間が平均14か月から15か月程度で推移しています。

    ビジネスモデル特許の取得についても、権利化に至るまで少なくとも1年強の期間を見込んでおきましょう。

  3. (3)ビジネスモデル特許の取得にかかる費用

    ビジネスモデル特許の取得には、以下の費用がかかります。

    特許印紙代(出願時) 1万4000円
    出願審査請求料 13万8000円+(請求項の数×4000円)
    特許料
    • 第1年から第3年まで:毎年4300円+(請求項の数×300円)
    • 第4年から第6年まで:毎年1万300円+(請求項の数×800円)
    • 第7年から第9年まで:毎年2万4800円+(請求項の数×1900円)
    • 第10年から第25年まで:毎年5万9400円+(請求項の数×4600円)

    ※第21年から第25年については、延長登録の出願があったときのみ

    また、特許出願を弁理士(特許事務所など)に依頼する場合は、弁理士費用が別途発生します。

4、ビジネスモデル特許の出願については弁護士に相談を

ビジネスモデル特許は、技術的な方法を用いたビジネスモデルの保護に役立つ反面、取得にあたって時間的・金銭的コストがかかります。また、発明として認められない場合や、新規性・進歩性が認められない場合など、特許権の登録が拒絶される可能性もある点に注意が必要です。

これらのコストやリスクを踏まえて、ビジネスモデル特許の出願を行うべきか否か適切に判断するには、弁護士へのご相談をおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、グループ内に弁理士も在籍しているので、特許出願の手続きについてもワンストップでサポート可能です。
ビジネスモデル特許出願をご検討されている際は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

5、まとめ

技術を活用したビジネスモデルについて、他社の模倣・盗用を防ぎ差別化を図りたい場合は、ビジネスモデル特許の出願を検討しましょう。ビジネスモデル特許が認められるかどうかについては、弁護士や弁理士のアドバイスを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、特許権に関するご相談を随時受け付けております。
グループ内に弁理士も在籍しており、特許出願の手続きも含めて総合的にサポートすることが可能です。ビジネスモデルの出願については、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスにご相談ください。

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