カントリーマネージャーでもクビ? 理由や違法性、対処法など

2025年02月26日
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カントリーマネージャーでもクビ? 理由や違法性、対処法など

カントリーマネージャーとは、企業が海外進出する際に、当該国において経営を取り仕切る現地責任者です。

しかし、カントリーマネージャーであっても一般の労働者と同様に雇用契約に基づいて働いていることが多いため、突然会社から解雇を言い渡されることがあります。会社をクビにされた場合、カントリーマネージャーはどのように対処したらよいのでしょうか。

今回は、カントリーマネージャーがクビになる理由や対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。


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1、カントリーマネージャーがクビとなる理由

カントリーマネージャーがクビになる理由にはさまざまなものがありますが、代表的な理由を挙げると以下のようなものがあります。

  1. (1)パフォーマンス不足

    カントリーマネージャーは、海外拠点となる会社の最高責任者です。適切な戦略がとれず、目標を達成できない場合には、パフォーマンス不足を理由としてクビにされることもあります。

    【パフォーマンス不足に陥る要因】
    • ローカル市場競争への対応不足:地域の文化やマーケットに対する適切な戦略を設定できないと業績に悪影響を及ぼします。
    • 短期間での成果要求:就任直後から過度なプレッシャーや、本社からの非現実的な目標や短納期の期待が、パフォーマンスに悪影響を与えることがあります。
  2. (2)部下へのハラスメント

    外資系企業では、ハラスメントに対して非常に厳格な措置をとっているケースが少なくありません。

    以下の場合は即刻クビとなるおそれがあります。

    【即刻クビとなる可能性があるハラスメント】
    • セクシャルハラスメント:性的なジョークや身体的な接触などの強要
    • パワーハラスメント:公開の場での叱責や人格否定の発言、過度な労働の強要
    • 差別的発言:特定の人種、性別、宗教に対して差別的な発言
    • プライバシーの侵害:部下の私生活に対して過剰に干渉し、プライベートな情報を暴露する
    など


    こうした行為が部下の告発などから発覚し、即クビになるということも珍しくありません。

    カントリーマネージャーは、目標数値の達成というノルマがあるため、つい部下に対して厳しくあたってしまうこともありますが、それがパワハラと評価されてしまうことがあるので注意が必要です。

  3. (3)事業縮小や事業閉鎖

    海外進出をしたものの、思うような成果が上げられないようなケースでは、その国での事業を閉鎖したり、縮小したりすることがあります。

    事業縮小や事業閉鎖は、会社側の都合により行われるものですので、カントリーマネージャーには落ち度がありませんが、事業縮小や事業閉鎖によりカントリーマネージャーのポストがなくなれば、クビになってしまいます。

2、カントリーマネージャーは即クビでも問題ない? 違法性は?

カントリーマネージャーは、会社から即クビにされても問題はないのでしょうか。以下では、外資系企業特有の問題点も踏まえて、カントリーマネージャーをクビにすることの違法性を説明します。

  1. (1)外資系企業でも日本の労働基準法が適用される

    紛争が生じたときにどの国の法律を適用するのかという基準を「準拠法」といいます。準拠法は、「法の適用に関する通則法」(通則法)で、以下のように定められています。

    • 当事者の合意があるとき:合意内容に従う
    • 当事者の合意がないとき:当該法律行為にもっとも密接な関係がある地の法律が適用される(これを「密接関連地法」という)


    また、通則法では、労働契約の特則があり、労働者から密接関連地法の適用を求められた場合、契約上適用される法律が密接関連地法以外のものであったとしても、労務提供地の法律が密接関連地法と推定され適用されます(通則法12条)。

    つまり、外資系企業であっても、日本国内で働いている場合には日本の労働基準法が適用される、ということです。

  2. (2)カントリーマネージャーも雇用契約に基づいて働いているケースが多い

    カントリーマネージャーは、企業の海外拠点において経営を担う役割を担っていますが、その多くが雇用契約に基づいて働いています。すなわち、契約上は、一般の社員と同様に「労働者」として働いていることになります。

    そのため、後述するような解雇規制が及びますので、簡単にカントリーマネージャーを解雇する(クビにする)ことはできません

  3. (3)日本企業と同様に厳格な解雇規制が及ぶ

    経営者であれば委任契約に基づいていますので簡単にクビにすることができますが、カントリーマネージャーの多くは労働契約に基づいて働いています。

    そのため、一般の労働者と同様に厳格な解雇規制が及びますので、客観的合理的な理由と社会通念上の相当性という要件を満たさなければ、カントリーマネージャーをクビにすることはできません。

    たとえば、目標数値が達成できなかったからといって直ちにクビにできるわけではなく、目標数値の設定が合理的であったか、目標不達成についてカントリーマネージャーに落ち度があったのかなどが慎重に審理されますので、クビに合理的な理由がないと判断されれば解雇は無効になります。

    このようにカントリーマネージャーは、会社からクビにされたとしても、不当解雇として争うことが可能です

3、無効な解雇に対する賃金請求について

解雇が無効な場合、カントリーマネージャーは、会社に対してバックペイを求めることができます。

  1. (1)バックペイの請求が可能

    バックペイとは、労働者の解雇が無効になった場合において、会社が労働者に対して支払わなければならない賃金をいいます。

    解雇が有効であれば、解雇日以降に労働者に賃金を支払う必要はありませんが、解雇が無効と判断されれば解雇日以降も労働契約が継続していることになりますので、会社には賃金の支払い義務があります。

    会社を解雇された労働者は、解雇日以降実際に会社で働いていませんが、労働者が働けなかったのは会社による不当解雇が原因ですので、働いていなくてもその間の賃金を請求することができます。

  2. (2)解雇後、他社で働いている場合はどうなる?

    解雇期間中にカントリーマネージャーが他者で働いて収入を得ていた場合、当該収入はバックペイから控除されます。ただし、解雇日直前の平均賃金の6割に相当する額は、最低限支払わなければなりません。

    なお、労働者が解雇後に当該会社での就労意思を失ったときは、その後にバックペイを求めることはできません。なぜなら、バックペイは労働者に就労継続の意思があることを前提とした制度だからです。

4、カントリーマネージャーがクビを言い渡された場合の対処法

カントリーマネージャーがクビを言い渡された場合、以下のような対処が必要になります。

  1. (1)証拠を集めておく

    不当解雇だということは会社をクビにされたカントリーマネージャーの側で立証していかなければなりません。そのためには、不当解雇に関連する証拠が必要になりますので、まずは証拠収集を行うようにしましょう。

  2. (2)解雇理由証明書を請求

    不当解雇の証拠として特に重要になるのが「解雇理由証明書」です。解雇理由証明書とは、会社が労働者を解雇した理由が記載された書面で、労働基準法により労働者から請求があった場合に交付が義務付けられている書面になります。

    解雇理由証明書は、雇用主から発行されなかった場合は請求することが可能です。取得すれば、どのような理由で解雇されたのかが明らかになりますので、今後不当解雇を争う際の方針が明確になります。また、会社側に解雇理由を後付けされるのを回避できるという効果もあります。

  3. (3)交渉する

    不当解雇の証拠が集まった段階で、会社に対して内容証明郵便を送り、不当解雇の撤回を求めていきます。内容証明郵便を利用することで、就労の意思があることを示せますので、今後バックペイの支払いを求めるときの重要な証拠となります。

  4. (4)労働審判、訴訟を申し立てる

    会社との話し合いで不当解雇の撤回をしてもらえなかった場合は、裁判所に労働審判の申立てを行うことが考えられます。

    労働審判は、労働者と事業主との間の労働問題を実態に即して迅速かつ適正に解決することができる手続きです。訴訟よりも早期の解決が期待できる手続きですので、訴訟提起前に労働審判を利用してみるとよいでしょう。

    もっとも、労働審判に対する異議申立てがあると通常訴訟に移行しますので、最終的には訴訟により解雇の有効性を争っていかなければなりません。

5、不当解雇を弁護士に相談するメリット

不当解雇のトラブルを弁護士に相談するメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  1. (1)違法な退職勧奨・不当解雇に関する法的反論

    会社から違法な退職勧奨を受けて退職を余儀なくされた場合や不当解雇によりクビにされたような場合には、会社に対して退職勧奨及び解雇の違法性を主張していく必要があります。

    そのためには、法的知識や経験が不可欠になりますので、一般の方では対応が難しいといえます。弁護士に相談をすれば、退職勧奨や解雇の問題点を指摘して、法的観点から反論することができます。会社との交渉を弁護士に依頼すれば、会社と対応な立場で話し合いを進められますので任意の交渉により解決できる可能性が高くなります。

  2. (2)未払い残業代の請求ができる

    未払いの残業代がある場合は、解雇の無効の主張とともに未払い請求をするよい機会となります。特に、カントリーマネージャーは、給与の金額も高額であることから、未払い残業代の金額も高額になる傾向がありますので、時効になる前にしっかりと請求していくことが大切です。

    もっとも、会社側からは、カントリーマネージャーが管理監督者に該当するなどの反論が出ることが予想されます。法的観点からしっかりと反論するためにも、弁護士のサポートが重要となります。

  3. (3)その他の労働トラブルもまとめて対応できる

    労働問題に実績がある弁護士であれば、不当解雇や未払い残業代以外についても、一緒に相談することができます

    たとえば、労働契約書や就業規則の確認を行い、解雇が契約に基づいて適切に行われたかを検証し、不適切な契約内容があれば、交渉の際の根拠とします。また、企業との交渉の際は客観的な証拠があることが重要になりますが、弁護士に依頼すれば、有効な証拠収集の方法についてもアドバイスを受けることが可能です。

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6、まとめ

カントリーマネージャーであっても、一般の労働者と同様の雇用契約が締結されているケースが少なくありません。このような場合は、厳格な解雇規制が適用されますので、簡単にクビにすることはできず、不当解雇にあたる可能性もあります。

「会社の解雇が不当である」「納得できない」と感じられているカントリーマネージャーの方は、まずはベリーベスト法律事務所 郡山オフィスまでご相談ください。労働問題に実績がある弁護士が、まずは状況をヒアリングし、解雇の有効性について見極めます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています