人手不足を理由に会社から退職拒否されたときの対処法
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福島労働局が公表している「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、2022年度の民事上の個別労働紛争相談件数は、5152件でした。そのうち、自己都合退職に関する相談が1141件あり、全体の22.1%を占めています。このことからも退職に関して悩みやトラブルを抱えている労働者が多いことがわかります。
会社を退職したいと思い、退職の意思を伝えたところ「人手不足だから辞められるのは困る」などといわれて退職させてもらえなかったという方もいるかもしれません。しかし、労働者には、退職の自由がありますので、このような人手不足を理由とする退職拒否は、違法になる可能性があります。
今回は、人手不足を理由に会社から退職拒否されたときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。
1、人手不足を理由に退職拒否することは許される?
人手不足を理由に退職拒否することは許されるのでしょうか。以下では、退職に関する基本的なルールと退職拒否の違法性について説明します。
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(1)退職に関する基本的なルール
労働者の退職に関しては、民法によって基本的なルールが定められています。
民法のルールは労働者の契約が、以下のどちらかによって変わります。- ① 期間の定めのある労働契約
- ② 期間の定めのない労働契約
それぞれの契約にける退職のルールは以下の通りです。
① 期間の定めのある労働契約(有期雇用:契約社員・派遣社員・アルバイト・パート)
期間の定めのある労働契約の場合、契約期間が満了すれば自由に退職することができます。
他方、契約期間の途中に退職することは原則として認められず、会社の承諾がなければ退職をすることができません。ただし、病気や怪我などやむを得ない事由がある場合には、契約期間の途中であっても会社の承諾なく退職することが可能です。
② 期間の定めのない労働契約(無期雇用:正社員・無期転換社員)
期間の定めのない労働契約の場合、労働者には退職の自由があります。期間の定めのない労働契約の場合は、退職理由を問わず、会社の承諾がなかったとしても自由に退職することができます。これは、就業規則に「1か月前に申し出ること」等の定めがあったとしても同様です。
ただし法律上も、退職希望日の2週間前までには、会社に申し出る必要があるとされています。 -
(2)人手不足を理由に退職拒否することは違法
前述の通り、有期雇用(契約社員・派遣社員・アルバイト・パート)の場合は退職ルールが異なり、やむを得ない事情を除き、雇用期間中は自由に退職できません。
一方、無期雇用(正社員・無期転換社員など)の場合には、退職の自由がありますので、人手不足を理由に退職拒否をすることは違法となります。
労働者としては、会社が退職拒否をしてきたとしても、適正な退職手続きを踏んでいれば、自由に退職することができます。
なお、退職時に会社から「辞めたら損害賠償請求をする」といわれることがあります。しかし、退職は労働者の正当な権利ですので、会社側の主張が法的に認められることはありませんので、ご安心ください。
2、人手不足だからと退職拒否されたときの対処法
人手不足を理由に退職拒否をされたときは、以下の対処法を検討しましょう。
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(1)口頭ではなく書面で退職の意思を示す
労働者には退職の自由がありますので、会社に対して退職の意思を伝えれば、会社の承諾がなかったとしても2週間の経過により退職が認められます。
退職の意思は、口頭で伝えることもできますが、口頭での意思表示だと「いった、いわない」のトラブルに発展する可能性がありますので、必ず「退職届」を提出する方法で退職の意思を示すようにしましょう。
人手不足を理由に退職拒否をする会社であっても、労働者から退職届が提出されれば、これ以上の引き留めは無駄だと理解して、退職に応じてくれる可能性があります。 -
(2)退職届を受け取ってくれないときは内容証明郵便で送付する
退職届を提出しても会社が受け取ってくれないという場合には、内容証明郵便を利用して退職届を提出するようにしましょう。
内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に対して・どのような文書を送付したのか」を郵便局が証明するサービスです。内容証明郵便を利用すれば、会社が退職届を受け取ったということが客観的に明確になりますので、後日争いになったときでも内容証明郵便を証拠として利用することができます。
ただし、内容証明郵便だけではいつ会社が退職届を受け取ったのかの証明ができませんので、必ず配達証明を付けるようにしてください。 -
(3)労働基準監督署に相談する
人手不足を理由に退職拒否をされたときは、労働基準監督署に相談するという方法もあります。
労働基準監督署は、労働者からの相談を無料で対応しています。電話での相談もできますので、退職拒否をされて対応に困っている場合には、労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。もし、法的な手続きを踏んで退職の意志を示したにもかかわらず企業が拒否している場合は、労働基準法違反として、調査や指導をしてもらえる可能性があります。
ただし、アドバイスのみで終わるケースも少なからずあり、労働基準監督署が労働者の代わりに会社と交渉してくれるわけではない点にも注意が必要です。 -
(4)弁護士に相談する
人手不足を理由に退職拒否されたときは、弁護士への相談も有効な対処法となります。
労働トラブルの解決実績がある弁護士に相談すれば、違法な退職拒否に対するアドバイスだけでなく、労働者の代理人として会社と交渉をしてくれますので、退職に関する精神的・時間的負担を大幅に軽減することができます。
お問い合わせください。
3、退職拒否されたからといってやってはいけないこと
退職拒否をされたからといって、以下のような行動をとると不利になる可能性がありますので絶対にやってはいけません。
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(1)バックレる
労働者に退職の自由があるからといって、バックレるのはやめましょう。退職にあたっては、後任の担当者への引き継ぎや会社の備品などの返却などの手続きが必要になります。このような退職時の手続きをせずに、いきなりバックレてしまうと、会社から損害賠償請求をされるリスクが生じますので注意が必要です。
違法な退職拒否をされて腹が立つという気持ちもわかりますが、社会人として責任を持った行動をすることを心がけてください。 -
(2)退職を諦める
会社から人手不足を理由に退職拒否されたからといって、退職を諦める必要はありません。
労働者には退職の自由がありますので、会社が退職に応じてくれなかったとしても、退職の申出から2週間を経過すれば会社を退職することができます。
なお、労働者個人では、会社に対して強い態度をとれないという場合には、弁護士に依頼して、退職交渉をしてもらうことも可能です。 -
(3)SNSなどで会社の情報を漏らす
違法な退職拒否を受けて、会社に対して不満があるからといって、そのことをSNSなどで発信するのはやめましょう。
発信した内容が事実であったとしても、会社の社会的評価を低下させるような事実だった場合には、名誉毀損罪が成立し、刑事処分を受けるリスクがあります。また、会社から不法行為を理由として損害賠償請求を受けるリスクもありますので、十分に注意して行動しなければなりません。
4、会社と揉めているときに弁護士を頼るべき理由
会社と揉めているときは、自分で対応するのではなく弁護士に依頼するのがおすすめです。
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(1)退職拒否の違法性を判断できる
退職拒否の違法性は、雇用契約の内容を踏まえて判断しなければなりません。知識や経験のない労働者個人では正確な判断が難しいといえますので、まずは弁護士に相談して、退職拒否が違法であるかどうかを判断してもらうとよいでしょう。
弁護士からのアドバイスに基づいて退職手続きを進めれば、会社とのトラブルも回避できる可能性が高くなります。 -
(2)代理人として退職代行をしてもらえる
労働者には退職の自由があるとはいっても、会社から人手不足を理由に退職拒否をされてしまうと、退職を諦めてしまう方も少なくありません。会社と労働者とでは、労働者の方が圧倒的に弱い立場にありますので、労働者自身で対応が難しいと感じるときは弁護士に依頼するようにしましょう。
弁護士に依頼すれば弁護士が代理人として退職代行をしてくれますので、労働者自身の負担はほとんどありません。民間企業の退職代行サービスでは、退職の意思を伝えることまでしかできませんが、弁護士であれば、以下のような対応も可能です。- 退職日の調整
- 有給消化についての調整
- 業務の引き継ぎ対応
- 退職金の金額の調整
退職に関するほぼすべての手続きに対応可能ですので、退職代行は弁護士に依頼するようにしましょう。
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(3)未払い残業代がある場合の対応も可能
退職にあたってはこれまで未払いとなっていた残業代を請求するケースも少なくありません。
弁護士であれば会社に対する未払い残業代の請求についても対応することができますので、退職手続と一緒に任せるとよいでしょう。
労働者個人では難しい、証拠収集、残業代計算、会社との交渉、労働審判・裁判などの手続きもすべて弁護士に一任できますので、未払い残業代を回収できる可能性が高くなるでしょう。
5、まとめ
労働者には退職の自由がありますので、人手不足を理由に退職拒否するのは違法となります。会社の承諾がなくても退職することができますので、退職届を提出するなど、しっかりと退職の意思を伝えることが大切です。
それでも会社が退職拒否を続けるような場合には、労働者個人で対応するのは困難といえますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
会社による退職拒否でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています