残業は月45時間が法律上の上限! 1日あたり何時間超えたら違法?

2024年09月25日
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残業は月45時間が法律上の上限! 1日あたり何時間超えたら違法?

労働基準法改正により、2024年4月1日から、残業時間の上限規制の猶予期間が設けられていたすべての業種にも、上限規制が適用されるようになりました。

これにより残業時間の上限は、原則として月45時間になります。もし月の労働時間を20日だとすると、一日あたり約2時間15分が残業時間の上限ということになります。ただし、実際には業務状況や契約内容により異なるので注意が必要です。

今回は、残業時間の上限規制と一日あたりの残業時間の規制について、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。


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1、残業時間の上限は月45時間? 1日あたりは何時間?

残業時間の上限は、どのように定められているのでしょうか。以下では、月の残業時間の上限規制の概要と一日あたり何時間までの残業が可能であるかを説明します。

  1. (1)残業時間の上限|月45時間・年360時間

    労働基準法の改正により、残業時間の上限が月45時間・年360時間と定められました。

    これまでも大臣告示により、月45時間・年360時間という残業時間の上限が定められていましたが、法的な拘束力はなく特別条項付きの36協定を締結すれば上限を超えて残業をさせることも可能でした。

    しかし、長時間労働による過労死などが深刻な社会問題となっていることを受けて、長時間の残業が行われる状況を改善するために、法改正が行われ、残業時間に法的拘束力のある上限が設けられるようになりました。

    月45時間・年360時間という残業時間の上限に違反した場合には、使用者に対して、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

  2. (2)一日あたり何時間の残業が可能?

    法律上の残業時間の上限は、月45時間・年360時間という定めだけですので、一日あたりの残業時間の上限は定められていません

    しかし、月45時間までが残業の上限とされていますので、一日あたりの残業時間の上限もある程度計算することができます。たとえば、月20日出勤し、毎日残業をしているケースを想定すると、一日あたりの残業時間の上限は、約2時間15分(約2.25時間)になります。

    月45時間の範囲に収まればよいため、一日あたりの残業時間には変動がありますが、平均でみれば、2時間15分がひとつの目安となるでしょう。

2、月45時間以上でも違法ではないケース

残業時間は、原則として月45時間が上限となりますが、月45時間を超えていても違法にならないケースがあります。

  1. (1)労働者が管理監督者に該当するケース

    労働者が「管理監督者」に該当する場合、労働基準法上の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外となります。すなわち、残業時間に関する規制も適用されませんので、月45時間以上残業したとしても違法にはなりません

    管理監督者とは、経営者と一体的な立場にある労働者のことをいいます。管理監督者に該当するかどうかは、労働者に与えられた肩書(課長、マネージャー、店長など)ではなく、以下のような要素に基づいて実質的に判断するのがポイントです。

    • 経営者と一体的立場にあるといえるだけの職務内容、責任を有しているか
    • 労働時間を自己の裁量で管理することができるか
    • その地位に相応しい賃金などの待遇を受けているか


    「経営者と一体的立場」とは、会社の経営方針に関わるような重要な業務を担い、その業務の責任を持っているということです。

    肩書だけで管理監督者として扱われている場合は、「名ばかり管理職」に該当しますので、会社に対して残業代を請求することが可能です。

  2. (2)新技術・新商品等の研究開発業務に従事するケース

    新技術・新製品等の研究開発業務については、残業時間の上限規制の適用が除外されています。そのため、これらの業務に従事している場合、月45時間を超える残業をしたとしても、違法とはなりません。

    新技術・新製品等の研究開発業務とは、専門的、科学的な知識や技術を有する人が従事する新技術・新商品等の科研究開発業務のことをいいます。既存の商品やサービスにとどまるものや商品をもっぱら製造する業務などはこれには含まれません。

    なお、当該業務については、1週間あたり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた場合、医師の面接指導が罰則付きで義務付けられています。

  3. (3)特別条項付き36協定を締結しているケース

    残業時間の上限は、月45時間・年360時間ですが臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結することにより、月45時間を超えて残業をすることが可能になります。

    ただし、その場合でも、以下のような残業時間の上限がありますので、これを守らなければなりません。

    • 時間外労働が年720時間以内
    • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    • 時間外労働と休日労働の合計が複数月(2~6か月)の各月平均すべてで1か月あたり80時間以内
    • 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月まで

3、時間外労働と休日労働は別枠?

残業時間の上限には、休日労働も含まれるのでしょうか。

  1. (1)月45時間・年360時間の上限には休日労働は含まれない

    月45時間・年360時間という残業時間の上限は、時間外労働のみが対象となりますので、休日労働は含まれません。

    そのため、時間外労働のみを対象として、残業時間の上限規制の範囲内であるかを計算することになります

  2. (2)特別条項付きの36協定を締結する場合には休日労働もカウントされる

    特別条項付きの36協定を締結すれば、月45時間・年360時間という原則的な残業時間の上限規制を超えて残業をすることが可能になります。

    しかし、特別条項を適用する場合でも、超えることができない残業時間の上限が設けられています。時間外労働と休日労働の双方の時間が含まれている上限は、以下の2つになります。

    • ① 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    • ② 時間外労働と休日労働の合計が複数月(2~6か月)の各月平均すべてで1か月あたり80時間以内


    なお、①で休日労働も合算して上限時間を計算するのは、これにより過重労働を防ぐ仕組みとなっているからです。

4、残業代が適切に支払われているか確認し、不足分を請求する方法

長時間の残業をしている労働者の方は、未払い残業代が発生している可能性がありますので、ご自身でしっかりと把握し、会社に対して請求していく必要があります。

  1. (1)残業代の計算方法

    残業代は、以下のような計算式に基づいて計算します。

    1時間あたりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間


    月給制の労働者の場合、「1時間あたりの基礎賃金」は、以下のように計算します。

    1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の平均所定労働時間(※)

    (※)1か月の平均所定労働時間=(365日-1年間の所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月


    なお、上記の月給には以下のような手当は含まれませんので注意が必要です。

    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住居手当
    • 臨時に支払われた手当
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  2. (2)未払い残業代請求の手順

    会社に対して未払い残業代を請求する場合、以下のような手順により行っていきます。

    ① 未払い残業代に関する証拠収集
    会社に対して残業代を請求するには、労働者の側で未払い残業代があることを証拠によって立証しなければなりません。証拠がなければ残業代を支払ってもらうのは困難ですので、まずはしっかりと証拠を集めることが大切です。

    残業代請求に必要な証拠は、事案によって異なりますが、一般的には以下のような証拠が必要になります。

    残業代が未払いであることを立証する証拠
    • 雇用契約書
    • 就業規則
    • 賃金規程
    • 給与明細


    残業時間を立証する証拠
    • タイムカード
    • シフト表
    • 業務日報
    • パソコンのログイン、ログアウト履歴
    • オフィスの入退室記録
    • 残業時間を記録したメモ


    ② 内容証明郵便の送付
    残業代請求は、内容証明郵便を利用して書面で行うのが一般的です。内容証明郵便は、郵送した内容を郵便局が証明するサービスです。誰でも利用することができるため、後日裁判になったときの証拠として利用することができます。

    また、残業代請求の時効は残業代が発生したときから3年間ですが、内容証明郵便を送付すれば、時効の完成を6か月間猶予することができます。こうすることで、請求手続きや交渉を進めるための時間を確保することができます。

    ③ 会社との交渉
    内容証明郵便が会社に届いた後は、会社との交渉を行い、残業代の支払いを求めていきます。
    交渉の結果、会社が残業代の支払いに応じてくれる場合には、必ず合意内容を書面に残しておくようにしましょう。口頭での合意だけだと、後からトラブルになる可能性がありますので注意が必要です。

    ④ 労働審判・裁判
    会社との交渉が決裂したときは、労働審判の申立て、または訴訟の提起を行う必要があります。労働審判は、裁判に比べて迅速かつ柔軟な解決が期待できる手続きですので、訴訟提起前に労働審判の利用を検討してみるとよいでしょう。

  3. (3)残業代請求をお考えの方は弁護士に相談を

    残業代請求をするためには、残業代に関する証拠収集や複雑な残業代計算をしなければなりません専門的な知識や経験がなければ、これらの作業を行うのは困難でしょうそのため、まずは弁護士に相談することをおすすめします

    労働問題の実績がある弁護士であれば、労働者に代わって証拠収集や残業代計算を行い、それに基づいて会社との交渉も可能です。弁護士に依頼することで、労働者の負担は大幅に軽減しますので、自分で対応するのが不安だという方は、早めに弁護士に相談するようにしょう。

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5、まとめ

残業時間には、月45時間・年360時間という上限が設けられています。一日あたりの残業時間の上限は何時間までと決まっているわけではありませんが、一日の残業が長時間に及べば月45時間という残業時間の上限を超える可能性もありますので注意が必要です。

長時間残業が続いている場合、残業代も未払いになっている可能性がありますので、未払い残業代の有無を確認するためにも、まずはベリーベスト法律事務所 郡山オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています