法定相続人の範囲はどこまで? 相続順位や割合などの基本を解説

2023年09月07日
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法定相続人の範囲はどこまで? 相続順位や割合などの基本を解説

福島県にある郡山市役所が公表する統計資料「郡山市の自然動態・社会動態(1965年以降年毎)」によると、令和4年の死亡者数は3708人でした。前年よりも184人多い結果となっており、郡山市内の死亡者数は、年々増加傾向にあります。

人が亡くなると、亡くなった方(被相続人)の遺産を法定相続人が分け合うことになります。そのため、誰が遺産を引き継ぐのかを理解するためには、どこまでの範囲の親族が法定相続人となる対象範囲に含まれるのかを知ることが重要です。

本コラムでは、相続権を有する法定相続人の範囲、相続分など、遺産相続に関する基本について、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスの弁護士が解説します。

1、法定相続人とは? 相続人の対象範囲はどこまで?

遺産相続の理解を深めるために、法定相続人の意味や範囲といった基本的事項について説明します。

  1. (1)法定相続人とは

    法定相続人とは、民法によって定められた被相続人(亡くなった方)の遺産を相続することができる人のことです。

    被相続人が生前に遺言書を作成しており、「法定相続人以外の特定の人に遺産を相続させる」という内容のものだった場合には、たとえ法定相続人以外の人であっても、遺言書に記載された方が被相続人の遺産を相続することができます。

    しかし、遺言書がなかった場合には、法定相続人による遺産分割協議によって遺産の分け方を決めるのが基本的な相続の方法です。

  2. (2)法定相続人の範囲

    法定相続人は、被相続人と血縁関係のある親族および配偶者になります。
    ただし、どこまでの範囲の親族が法定相続人に含まれるのかについては、民法に具体的な規定が存在しており、以下に記載のとおりです。

    • 配偶者
    • 子ども(直系卑属)
    • 両親、祖父母(直系尊属)
    • 兄弟姉妹


    なお、被相続人が亡くなる前に被相続人の子どもが亡くなっており、その子どもに子ども(被相続人からみて孫)がいる場合には、孫が子どもに代わって相続人になります。これを「代襲相続」と呼び、代わりに相続人になった方を「代襲相続人」と呼びます。

    代襲相続は、兄弟姉妹においても認められていますので、兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡しており、兄弟姉妹に子ども(被相続人からみて甥・姪)がいる場合には、甥・姪が兄弟姉妹に代わって代襲相続人になります。

    ただし、被相続人の直系卑属(子どもや孫など、自身より後の世代にあたる親族)の場合には、「再代襲」といってひ孫や玄孫にも相続権が認められますが、兄弟姉妹の場合には、再代襲は認められません。そのため、甥・姪よりも下の代には相続権が移らない点に注意が必要です。

  3. (3)法定相続人の順位

    法定相続人に該当する人であっても、全員が必ず遺産を相続することができるというものではありません。どこまでの範囲の法定相続人が相続財産を引き継ぐのかは、法定相続人の順位に従って判断することになります。

    まず、配偶者は相続順位とは関係なく、常に相続人となります。そして、配偶者以外の相続人は、以下のとおりの順位で相続人になります。

    • 第1順位:被相続人の子ども、またはその子どもの代襲相続人(直系卑属)
    • 第2順位:被相続人の両親、祖父母(直系尊属)
    • 第3順位:被相続人の兄弟姉妹、またはその兄弟姉妹の代襲相続人


    たとえば、第1順位の相続人がいるケースでは、第2順位および第3順位の相続人は遺産を引き継ぐことができません。このように、先順位の相続人がいると、後順位の相続人は遺産を相続することができないのです。

2、相続する人によって法定相続分は異なる

法定相続人が被相続人の遺産を相続するとき、どのような割合で遺産を取得することになるのでしょうか。以下では、法定相続人の法定相続分について説明します。

  1. (1)法定相続分とは

    法定相続分とは、民法(900条)によって定められた各相続人の遺産の取得割合のことをいいます。

    被相続人の遺言書がない場合は、相続人による遺産分割協議によって遺産を分けることになります。遺産分割協議では、法定相続分による割合に従って、各相続人に遺産を分配するのが基本です。

    しかし、この遺産分割協議で話がまとまらなければ、遺産分割調停や審判によって遺産分割を行うことになります。その際にも、法定相続分に従って遺産の分け方が決められることに留意しましょう。

    このように法定相続分は、遺産分割の際の目安になる割合となりますので、正確に理解しておくことが大切です。

  2. (2)相続人の組み合わせ別の法定相続分

    法定相続人の法定相続分は、法定相続人の組み合わせにより、以下のように異なってきます。

    ① 配偶者のみ、子どものみ、直系尊属のみ、兄弟姉妹のみの場合
    各相続人が遺産のすべてを取得することが可能です。同順位の相続人が複数存在しているケースでは、相続人の数で遺産を按分する方法で分け合います。
    たとえば、子どもが2人いる場合は、被相続人の遺産を子どもたちが各2分の1の割合で相続することになります。

    ② 配偶者と子どもの場合
    配偶者が2分の1、子どもが2分の1という法定相続分で遺産を分けることになります。子どもが複数いる場合は、2分の1の相続割合を子どもの数で按分しなければなりません。
    たとえば、配偶者と子ども2人の場合には、配偶者の相続分が2分の1、子どもたちの相続分が各4分の1になります。

    ③ 配偶者と親(直系尊属)の場合
    法定相続分は配偶者が3分の2、親(直系尊属)が3分の1です。父母がともに存命している場合には、父母の相続割合は、各6分の1になります。

    ④ 配偶者と兄弟姉妹の場合
    法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。兄弟姉妹が複数いるときは、4分の1の相続割合を兄弟姉妹の人数で按分します。
    たとえば、配偶者と兄弟姉妹2人の場合には、配偶者の相続分が4分の3、兄弟姉妹たちの相続分が各8分の1になります。

3、法定相続人の調査が必要な理由と確認する方法

相続が始まったら、まずは誰が法定相続人にあたるかを確認することが大切です。以下では、法定相続人の確認が必要な理由や調査方法について説明します。

  1. (1)法定相続人の確認が必要な理由

    被相続人が遺言書を作成せずに亡くなった場合には、法定相続人による遺産分割協議によって残された遺産を分けることになります。
    遺産分割協議を成立させるために重要となるのが、「協議内容に対して法定相続人全員の合意がある」ということです。

    遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ無効になってしまいます。遺産分割協議に際して相続人が一人でも欠けていたときには、その欠けていた相続人を加えて遺産分割協議をやり直さなければなりません。遺産分割協議が無効になってしまうと、それまでに掛かった時間や費用のすべてが無駄になってしまいます。

    そのため、遺産分割協議を行う前提として、どこまでの範囲の親族が法定相続人となるのか、そして、その中で誰が相続人となるのかといった確認が必要となるのです。

  2. (2)法定相続人の調査方法

    法定相続人を確認するためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を取得することが基本となります。

    まずは、被相続人が死亡した時点の本籍地にある市区町村役場から戸籍謄本の取り寄せを行いましょう。被相続人が生前に本籍地を変更したことがあった場合、その戸籍謄本には、被相続人がどこから本籍地を移してきたのかが記載されています。次に、その前に本籍地のあった市区町村役場から戸籍謄本を取り寄せます。

    このような作業を繰り返していき、出生から死亡までの連続した戸籍謄本などを集めていくことで法定相続人を調査することが可能です。

    なお、戸籍謄本などは、本籍地のある市区町村役場でしか取得することができません。そのため、被相続人が結婚・離婚を繰り返していたり、転籍をしていたりするような場合には、複数の市区町村役場に戸籍謄本などを取り寄せる必要があり、大変な作業となるケースもあるでしょう。

    すべての戸籍謄本などを取り寄せるためには、かなりの時間と手間を要することになるため、相続が開始した場合には、早めに取り掛かるようにしましょう。

4、法定相続人を確認するときの注意点

法定相続人を調査・確認する際には、いくつか注意すべきことがあります。以下では、ケース別にその注意点を説明します。

  1. (1)被相続人に内縁の配偶者がいる場合

    内縁の配偶者とは、法律上の婚姻関係にない配偶者です。
    法定相続人には配偶者が含まれていますが、ここでいう配偶者は、婚姻届を提出して、法律上の婚姻関係を有することになった配偶者のことをいいます。

    そのため、被相続人に内縁の配偶者がいたとしても、内縁の配偶者は法定相続人には含まれず、遺産を相続する権利は認められません

  2. (2)相続放棄をした相続人がいる場合

    相続放棄とは、裁判所に申述の手続きをすることによって、引き継ぐはずだった全遺産を放棄することです。相続放棄をすると、相続人は、最初から相続人ではなかったことになります。
    つまり、プラスの財産(預貯金や不動産など)もマイナスの財産(借入金や未払金など)も、すべてを相続することができなくなります。

    相続放棄が行われると、相続人でなくなった方を除外する形で遺産相続の手続きを進めることになります。このとき、相続放棄によって後順位の法定相続人に相続権が移ることがあるため、注意が必要です。

    たとえば、被相続人に2人の子どもがいる場合に、そのうちの1人が相続放棄をしたときは、片方がすべての遺産を相続することができますが、2人とも相続放棄をした場合には、後順位の相続人に相続権が移ることになります。

  3. (3)再婚相手に連れ子がいる場合

    再婚した相手に子どもがいるケースも珍しくありません。再婚することによって、その配偶者には相続権が認められますが、その時点では相手の連れ子に相続権はありません。

    再婚相手の連れ子に被相続人の相続権を生じさせるためには、被相続人と連れ子との間で養子縁組をすることが必要です。
    養子縁組の手続きが完了することで、連れ子にも被相続人の実子と同じ割合で遺産を相続する権利が認められます。

  4. (4)相続欠格や相続廃除があった場合

    相続欠格とは、相続欠格事由に該当する相続人の相続権を失わせる制度のことをいいます。また、相続廃除とは、被相続人に虐待や重大な侮辱をした相続人の相続権を失わせる制度です。

    相続欠格は、相続欠格事由に該当する事情があれば当然に相続権が失われるのに対して、相続廃除は、家庭裁判所への手続きが必要になるという違いがあります。

    相続欠格事由に該当する相続人や相続廃除があった相続人は、被相続人の遺産を相続することはできません。

  5. (5)相続人に行方不明者がいる場合

    遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員の合意が必要になります。
    しかし、相続人に行方不明者がいるときは、相続人全員の合意を得られないため、遺産分割の手続きを進めていくことができません。

    このようなケースでは、家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任の申し立て、または失踪宣告の申し立てをすることによって、遺産分割の手続きを進めることが可能になります。

    どちらも複雑な手続きとなりますので、専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくとよいでしょう。

5、まとめ

遺産相続では、まず、どこまでの範囲の親族が法定相続人に含まれるのか(相続権を有するのか)を確認することが基本です。

相続人の範囲を誤ってしまうと遺産分割協議が無効になってしまいますので、どこまでの範囲の親族が法定相続人にあたるのかを正確に判断するようにしましょう。

遺産相続に関する手続きでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 郡山オフィスまでお気軽にご相談ください。遺産相続に関する知見を有した弁護士が、親身にお話しを伺いながらサポートいたします。

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